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苦い人生 13
オレは、なんて返せばいいんだろうか?
初めて食べるよって言えばいいのか、
そうなんだって嘘を吐けばいいのか、
どの苦い言葉を吐けば、この甘い生活を維持できるんだろう?
「……買って行ったの、会社の奴らにだったかも」
「う うん」
もごもごと言う言葉は歯切れが悪くて、悌嗣の言葉が後ろめたさから出た言葉なんだってわかる。
「そう言うのってごちゃまぜになるよね。オレもお客さんに貰ったお菓子とか、わからなくなるよ」
「そ だよな、あるよな」
「うん、お礼言ったらきょとんってされて、気まずいんだよね」
何とかそう誤魔化して……
苦いコーヒーを飲み下した。
バンッ と勢いよく扉が開いたと思ったら、そのままの勢いでカラスちゃんが飛び込んでくる。
殴り掛かられるんじゃ……ってひやりとさせるほどの形相でカウンターまで来ると、「さ 」って言いかけてぐっと言葉を飲み込んだ。
「はいはい。ジュースね」
酒ではなくオレンジジュースを出すと、ひったくるようにして掴み上げて一気に飲み干してしまった。
喉が渇いていたと言うよりは、怒りを鎮めたいって感じがする。
「コップ叩きつけないでよ」
「うっ しないよ」
振り下ろしかけたコップを持つ手を止めて、そろりとカウンターの上に置く。
僅かの雫を名残のように残すコップを握り潰されない内に回収すると、カラスちゃんは恨みがましそうな顔でこちらをじろりと睨んだ。
「最近は幸せいっぱいな顔してたのに、どうしたの?」
「む 昔の、友達が 」
「友達」
「ちょ、ちょっと親しい友人が 」
「親しい」
「…………元セフレが」
観念したように言うと、カラスちゃんは恨みがましそうな顔を更にじっとりとさせてくる。
「久しぶりに連絡来たから何事かと思ったら 」
「うん?」
「ヒートになったらヤらせろって」
何だって⁉って怒りも湧いてくるけれど、元とは言え割り切ってセフレとして付き合っていた相手なのだから、そう言うこともあるの……かも?
あの双子と会った時にはそう言うのはいなかったみたいだけど、ワンナイト的なアレは時折見かけていただけにフォローに詰まった。
「や、ヒタさんの言いたいこともわかるんだけどさ」
察しがいいのか、それとも駆け引きの経験値の差なのか、カラスちゃんはそう言うとおつまみに出したピーナッツを摘まむ。
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