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苦い人生 20

「えっと、……どうしたらいいかな?」 「じゃあ、いつもみたいに、まずぎゅって抱き締めさせて」  悌嗣はいつも、する前にぎゅっと力一杯抱き締めて来る。  それが合図だっていつの間にかなっちゃったけど、一瞬息が出来ないくらいに悌嗣の腕の中に閉じ込められるのは、たまらなく幸せだ。 「ん、わかった」  店は戸締りしているし、誰もいないってわかってるけどなんとなく恥ずかしくて、少しでも隠れることができるように店の奥に移動する。  開いている手で体をぎゅっと抱き締めるけれど、片手では物足りないし、悌嗣の逞しい腕でぎゅっとされる感覚には程遠い。 「抱き締めた?」 「ん……でもやっぱ、物足りない」 「はは、……うん」  熱を含んだ頷きは色を含んでいると同時に思った通り嬉しそうで……  はにかむようにして笑っているんだろうなって思ったらそれだけで胸の中がくすぐったいし甘い感覚で満たされる。 「胸触って。直接は駄目だから!焦らすように服の上からな?」 「おっさんクサい」  ちょっと不服そうな声が聞こえてきたけれど、それを無視してそろりとシャツの上から中指の腹で突起を撫でた。  寒くもなければ弄ってもなかったのに、なぜだかすでにそこはコリコリと主張していて薄い布を押し上げている。 「う……」 「もう固くなってる?」 「うるさいな!」 「当たったんだ!」  小さな子供のように嬉し気に声を上げる悌嗣を放っておいて、いつも悌嗣が触れてくるやり方を思い出してくりくりと乳首を虐める。 「スピーカーにして、電話はテーブルに、そしたら両手で弄れるだろ?」 「わ、かってるよ」  そうしなけりゃいけないって言うのは重々承知だけど、指示されてそうするとなると恥ずかしさが半端なくて…… 「や、やっぱり家じゃ駄目か?」 「だーめ。俺もう、準備万端だもん」 「もん なんて、可愛い子ぶるな!」  言い返してみたところで悌嗣が引くことはないって分かっている。 「ん りょ、両手で触ってるよ」 「じゃあそこ、ぷっくりなるまでイジメて」 「っ も、  」  もう固く尖って痛いくらいだ とは言葉が出ない。  ぐっと言葉を飲み込んだはずなのに、電話の向こうは面白そうに笑い声を押し殺していて、きっとオレがどんな状態なのかわかっているはずだ。  悔しい思いをしながらも、いつもとは違う非日常に脳は揺さぶられてグラグラする。  ソファーに体を沈み込ませて、たくし上げたシャツを口に咥えると、「下、どうなってる?」って問いかけが聞こえてきた。  体を寝かすようにして座ったソファーの上で、そろりと視線をやればスラックスをわずかに押し上げるふくらみが見える。

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