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苦い人生 25

「…………ごめん」  苦い苦い謝罪の言葉を口にするけれどすぐには返事が返らなくて、心臓が破裂しそうなほど早く脈打って、叫び出しそうなほどぞわぞわとした悪寒が胸に燻る。 「…………帰ったら、話そうか」 「え⁉」 「そのことについて、とか。あとは……快斗が気に掛かってることとか?」  ぐっと言葉が詰まったのは、それがオレ達の関係に対する最後通牒だったらって思ったからだ。  悌嗣の代わりに、今度はオレが何も言えなくなった。 「なんかあるだろ?」 「 な ないよ」 「あ、勘違いするなよ?俺は別に悪い話とかしたいわけじゃなくて、快斗とはこれからもずっと一緒にいたいって思ってるからな」 「…………」 「どうした?俺の何が不安にさせてる?」    不安……  何が不安なのか、多すぎるからか、むしろ悌嗣がオレに寄り添おうとしてくれているからなのか、正直オレにもわからない。  ただ、見え隠れするオレ以外の存在が嫌なんだ と言ったところで、悌嗣にはピンとこないかもしれなかった。 「うま く、言葉にできなくて」 「うん」 「なんて言ったらいいのか  」  藪を突いて、悌嗣が側から離れて行ってしまったら?  そう思うだけで石のように体が固まって動かない。 「…………」 「じゃあ、二人で話し合いながら答えを見つけようか」  あやすような声はこんな返事しかできないオレに寄り添おうと言う気持ちが表れている。  そんな悌嗣がオレはとても愛おしくて……  どんなことが起こっても、  何があっても、  例え死んだとしても、  悌嗣と一緒にいたいって願ってしまう。  死が二人を別つまで……なんて言葉があるけど、死が二人を別っても、オレは悌嗣と一緒にいたい。 「問題があるなら二人で考えよう、それで、納得いくまで話そう」 「……それで、ケンカになるのが、嫌なんだ」 「仲直りすればいいだけだろ」  そう簡単に言ってはくれるけど…… 「たくさんたくさんケンカして、同じ数だけ仲直りすればいいだけの話だろ?何度でも、やり直せばいいだけなんだから」 「でも……」 「明日、出張報告と引継ぎだけしたら帰るから」 「へ⁉︎」 「もともと出張の次の日は休んでもいいんだから」 「だ……」 「すぐ帰るから」    強くはなかったけれどはっきりと言われて、悌嗣には見えないってわかっているのにコクリと頷いた。  暗い中を家に戻る気になれなくて、明るくなってから帰ろうとしてどうやらうつらうつらしてしまっていたらしい。

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