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甘い生活 3

      本当のことを言うのならば、俺だって欲しい。    でも、俺は一度、二人を亡くしているから……  Ωの男体は元々出産に向いていない体だ。  快斗自身の体にも、子供にも大きな負担がかかる。  覚悟をしてくれと言われて、  分娩室から押し出すように出されて、  次に顔を見れた時にはもう二人とも……    βの俺との間に子供が出来る確率はα相手よりも少し低くて、諦めようかと話していた矢先だったから余計に嬉しくて、二人して喜んで、毎日が幸せで。  膨らむ腹に二人していろんなことを話し合ったし、性別が分からない内から名前を一杯考えた。  医者からは気になるようなことは言われなかったし、快斗には持病も何もないから……  ただただ、親子になれるんだって信じて疑わなかった瞬間がすべて崩れ去ったあの時の、あの空虚な胸の内は初めて快斗を亡くした数年間を押し固めたようだった。    俺はもう、二人を見送らなくちゃいけないなんて、したくない。  男でも女でも呼べるようにと二人で考えた名前は、もう俺しか知らない。  あんな思いは、もうしたくないんだ。    俺だけが知る二人の子の命日は、毎年どうしたって気が塞いでしまうほどなのだから。 「洗濯大変になるだろ!」  苦い胸の内を隠しながらそう言ってごまかしてはみたけれど、快斗はやはり何かを言いたそうだったけれど、そのことについて話し合うには今の俺には無理で、ただはぐらかすことしかできなかった。    マフィンを手渡すと、快斗は幸せそうにそれにかぶりついてもぐもぐと可愛い動作で咀嚼している。    前回、これを渡した時には一瞬微妙な顔をされて……、よくよく考えてみれば今回の人生でこれを快斗に買って帰るのは初めてなことに気が付いた。  そうだった……二人で見つけた開店したばっかりのこの店に行ったのは、前々……?回の時だったはず。  早めに映画を見に行った帰りだったか、どうだったかな……   「開店のチラシ配っててさ、快斗はこう言うの好きだろうなって思って、いっぱい買ってきておいたんだ」    初めて食べる物なのに「気に入ってたろ?」なんてことを言われても、そりゃ困惑もする。    いや、困惑だけじゃなくて、何かの疑惑の芽を芽吹く原因にさせてしまったのかもしれない。  でなければ、同僚といる所を見ただけであそこまで動揺するはずがない。  「……悌嗣?」  カップケーキを食べ終えて、きょとんとこちらを見上げる快斗が可愛い……じゃなくて、何かを訴えている。  再戦か?  それとも?  似合わない顎髭はホントなんとかして欲しいんだけど、本人が気に入っているようだから何も言えない。  まぁその似合わなさも可愛いんだけれども。  

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