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甘い生活 4
まだ少し顔が赤い気がするけれど、時間的にはもう発情期が治まる時期だからもう一戦あるのかどうかは快斗次第だ。
かぶりついたせいでカスタードが零れてしまって、それを舐めていると快斗の視線がそれを追いかけているのが分かる。
赤い顔がますます朱を帯びて、とろりとした目は物欲しそうに俺の舌を追いかけている。
本人は自覚がないんだろうけれど……発情期の快斗はいつもの二倍も三倍も、いや、もっとエロい。
発情期のΩはエロくてエロくて、αじゃない俺で満足してくれているのかどうか、ちょっと不安になる時がある。でもそれと同時に抑制剤を使っていない本来の発情期の熱量で求めて欲しいって思うこともあって……
けれどそれは、このつかたる市では致命的な行為でしかない。
医薬の進歩で今現在では、体に合うものをきちんと服用すればフェロモンが漏れることはまずないらしい。
俺はβらしいけど、無性かどうかの微妙なラインの上にいるから、フェロモンだとか匂いに惹かれるだとかはまったくわからない。
だから薬云々で違うかどうかって言うのはわからない。
でも、快斗は違う。
もし、万が一、匂いが漏れてαに襲われたら?
俺が幾ら噛んでもつかなかった歯型が、快斗の項につくなんて……ぞっとする。
αやΩと言ったバース性に様々な優遇があるつかたる市だけれど、それだけに快斗が運命の番とやらに出会ってしまう可能性も高い訳で……
俺はいつも、いつ快斗がぽっと出のαに連れて行かれてしまうんじゃないかと不安を抱えたままだった。
繰り返す人生の中でいいこともあって、ヒタの初めてを何回ももらえたこととか、イイトコロは全部知ってるから初めてなのにどろどろに気持ちよくさせれたこととか、まぁその辺の経験がものを言うとこは攻めの余裕を見せることが出来たのは嬉しかった。
何せ本当に最初の一回目は俺も快斗もやり方とか進め方とか、AVや本とかの受け売りばっかりでテンパってしまったばっかりに、血が出たり泣かせてしまったりして散々だったんだから。
まぁ、もう、俺しか覚えてないことだけど さ。
「顔がにやけてるよ?」
トントンと同僚に指先で肩を叩かれてはっと顔を上げた。
「あ、 」
「やらしいこと考えてたのかな?」
抑制剤なしの快斗とすごす発情期のイメトレをしていた なんてことは、例え休憩中でも言えない。
「や、えーっと」
何かいい言い訳を考えては見るけれど、うまい言葉は出てこなかった。
前回ではこんなやり取りがなかったせいで、ここで話しかけられたのは初めてだ。
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