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甘い生活 9
「い……入れないんだからせめて、その 」
もごもごと口の中で「飲みたい」と言われて眩暈がしそうだった。
さすがに俺のナニを飲んで喉を詰まらせた……なんてことは今までもなかったから、その心配はしてないけれど、快斗にそんなモノを飲ませてしまっていいのか と言う一抹の罪悪感と、飲みたがってくれるんだって言う高揚感で頭の中がクラクラする。
「だからってっ もうちょっと長く楽しませてよ」
ぺちりと腹を叩く息子を宥めるように抑えながら、ぺたんと座り込んでしまっている快斗を引っ張り上げた。
「ほら、風呂行くぞ」
「ん でも、 」
すんすんと鼻を鳴らす癖を見せて、どこか残念そうに見える。
αも匂いに敏感だと聞いたけれどΩもそうだと聞いたことがあるから、快斗のこの行動は俺の匂い……と言うよりフェロモンを探そうとしているのかもしれなかった。
残念ながら、俺には快斗の匂いがわからなくて……感じるのは汗や使っているシャンプーの匂いだけだ。
バース性の壁を感じるようで、その自然な癖を見ると物悲しいと言うか、除け者にされたような疎外感に押し潰されそうになる。
「匂いなら汗かいたら出てくるだろ?」
「そう、なんだけど」
名残惜しそうに俺の股間に視線をやる姿に、何かが違うんだろうな と思う。
俺としては洗ってない股間を舐められたってだけでも、なんだか申し訳なくなってくるのに。
ちらちらと見られて、ため息交じりに快斗の似合わない顎髭を弄ぶ。
じょりじょりとした感触は楽しいけれど、フェラをされていると太腿の皮膚の薄い部分をこれが当たってくすぐったくて仕方がない。
「……似合わないなぁ」
可愛いけれど似合わないものは似合わない。
思わず漏れた言葉にさっと快斗の目が光った。
「似合わない?」
「え、ああ。可愛いけど」
指先をくすぐる髭に首を傾げると、何かを期待したような目がこちらを見上げている。
髭?
なんだ?
この妙な引っ掛かりは……
「…………剃らないのか?」
どうして、快斗はアレで手首を切ったんだ?
いつから、アレがあることを知っていたんだ?
「シェーバーじゃ、ここまで伸びると切りにくくて」
もご と言われて腑に落ちた。
膝から崩れ落ちたい気分で快斗の髭を引っ張ると、ちょっとむっとした顔が俺を睨んだ。
「あぁ。じゃあ親父がいいのくれてるから剃ってやるよ」
「え?」
「どこやったっけかな」
そうわざとらしく水を向けてやりながら慎重に快斗の表情を窺うと、きら としたものが目の中に見えた気がした。
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