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甘い人生 13

「でも俺はっホントにちょっと、イラってしてる!」 「────っ」 「快斗の無神経な言葉に!なんだよ本命って!経験人数って!俺に快斗以外の本命がいるわけねぇだろっ!」  音の響きのいい浴室で叫んだせいで、自分の言葉がわんわんと響いて自身の鼓膜を震わせるのが不愉快だ。 「それとも!快斗は俺がそんな奴だって思ってるわけ⁉」 「ち、ちが、ちがう 」  何を引っかかっているのかと思ったら、そんな訳のわからないありえないことを思い込んでいたのか?  だから?  前回、同僚を助け起こした俺を見て何か思ったのか? 「俺はっずっと快斗だけだって言ってんのにっ」  快斗だけが唯一だから、  快斗を愛してるから、  快斗とずっと人生を歩んでいきたいから! 「噛んでも歯型はつかなかったけど!それでも俺は快斗のことを番だと思ってるよっ‼一生を、いや、死んだ先でもずっと一緒にいるって決めてるから!」  青かった顔色にさっと朱色が指して……  俯く顔はそれでも何か言いたげだ。   「……それじゃ、だめか?俺の決意だけじゃ、不安か?」  取った手はやはりまだ指先が冷たくて、まだ何かを緊張しているんだって教える。 「  子供、 」  ぽつん と呟かれて、とっさに装うことができなかった。  震えた手が立てたちゃぽんと言うなんてことはない音が、重い沈黙を運んできてお互いが窺い合うように視線を絡める。 「悌嗣は、また怒るかもだけど、やっぱり……諦めきれない」    俺の反応に怯える姿に、なんと返せばいい?  子供はいらない?  二人とも死ぬ?  もう失うのは嫌だ?  何とか言葉を吐くために息を吸い込む俺を、泣きそうな顔で快斗が見詰める。  あの子の顔立ちは、快斗に似てたんだよってことすら教えることができない俺に、何が言えるのか…… 「こ ……子供の親になる覚悟が、できない」  絞り出した言葉に、快斗は困ったような顔をした。 「オレだってないし。産むの怖いよ」 「……うん」 「でも、せっかくできるんだし……オレと悌嗣の、結晶って言ったら照れくさいんだけど、二人がこうやって愛し合ったんだって言う、遺せるものを遺したいんだ。オレは、自分がオメガだってわかって、もうこの世の終わりなんだって絶望したんだけど、でもオメガだったからこうやって悌嗣と一緒にいれるし命を繋いでいけるんだって、そう思ったらこの体も悪くないって  」

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