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甘い生活 15
あの日、風呂場で「手順を覚えててね」って言ってお互い散々楽しんだ。
その手順通りにテレフォンセックスをしてみたのだけれど、今回は途中で一人寂しく……なんてことにならずに済んでほっと胸を撫で下ろす。
快斗が寂しく思うように、俺だってこの三か月ごとの出張は寂しくて、ついでに言うとあの時、いつもとちょっと違うシチュエーションに暴走したのはしかたがないことだと思う。
……ともあれ、これで強盗犯と出会う時間をずらすことができたはずだから、快斗はここで死ぬことはない。
「悌嗣?どうした?」
「うん?いや、早く帰りたいなって。今からタクって帰ろうかな……」
そう言うと電話の向こうではっと息を飲む気配がして、そろりと「本当に?」って問いかけが返ってきた。
てっきり、タクシー代のこととか、体のこととか言われて反対されるって思っていただけに、思わず体が跳ねる。
「ホントに!快斗は店でちょっと休むだろ?そっちに直接行くから待っててくれる?」
「えっ……それなら家で……」
そう言うのを慌てて止める。
前回と前々回では、この時間にはもう強盗は行われていてそろそろ警察に捕まってはいたが、何がきっかけでどう変わるかは予想がつかない。
はっきりと決着がついたと分かるまでは、店で立てこもってもらえたら俺の精神衛生上非常にありがたかった。
「朝ご飯食べながら帰って、報告と引継ぎだけはしなきゃだけど、今日は休み取るからデートしよ」
「えっ!」
「な?」
声だけしか聞こえないけれど、それでも快斗がぱっと弾む声が聞こえて、前回の沈んだ声音をもう一度聞かずに済んだことにほっとした。
「俺とデートしたくない?」
「したいっ!」
なんでもないやり取りのはずなのに、快斗の声が弾んでいるのは胸のつっかえが取れたからかもしくは、噛ませて欲しいってつけた項の歯型のせいか。
結局は消えてしまうものだけれど、それでも二人の絆を形に出来たようで俺も嬉しかった。
「じゃあチェックアウトしてくる。ちゃんと体休めとけよ?」
「ん、わかった」
慌ただしくホテルを後にしてタクシーに乗り込み、その間にSNSをチェックする。
本当はしたくないことだったけれど、それでも遠くにいる俺が快斗の身に何か起こっていないか確認するには必要なことで……
人の死を、
快斗以外の死を探すことが、
胸を押し潰しそうなほどに苦しい。
俺のエゴで、押し付けてしまった死を受け取らざるを得なかった人の存在を、そのことで嘆く存在を、忘れられる日が来るとは思わないし、許されるとは思わない。
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