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collector 2

   その指が皮膚の薄い部分を通り、揶揄うようにしながら起立した愛らしい先端に触れる。 「ひゃっ  」  他の皮膚よりも幾分も柔らかで、敏感な箇所に触れられてΩは逃げるように体を揺すった。  けれどそれは細やかすぎる抵抗で、何事もなかったかのように侍従は躊躇いもなくソレを撫で上げる。 「やめ  」 「ほらもう、蜜がここまで垂れている」  人目に晒すことがないような部分を撫でられ、それでもなけなしの理性を持って睨みつけることで抵抗を見せるも、Ω自身自分の体の限界が近いことに気が付いていた。  触れる空気ですら敏感に拾い上げて震えてしまうのに、これ以上の刺激を脳が受け付けることができるとは思えなかった。 「おねが……俺には、番のや くそ  」    紡ぐ言葉が喘ぎ声に飲み込まれるように途切れて、侍従の手の動きに合わせて嬌声が上がる。  くつ と男が喉の奥で笑った。  大層なことを言っていたところで、結局はΩと言う性の本能に逆らえない姿が滑稽であり、そしてそれと同時に酷く哀れでもある……と。 「やぁっ あ、あ゛っ  そこっ 」  侍従の唇が胸に落ちた瞬間、一際甲高い悲鳴のような喘ぎと鎖が引っ張られる音が派手に響く。    乱れるΩを見下ろしながら、淫らなことをしているはずなのに侍従の表情はどこまでも平坦で、細い指で蕾を乱しては窺うように主である男に窺いの視線を送る。  けれど、男はそれを見てもそこから動かない。  部屋中に焚き締めてあった香を駆逐するするようにΩのフェロモンが垂れ流されて、まるで水の中にいるような息苦しささえ感じると言うのに男はゆったりとした態度を崩さなかった。 「ひぃ 、くる  」  脳みそを焼き切りそうなほどの熱量に負けて、自らを慰めようとするもその度に宝石を煌めかせる枷が邪魔をする。 「どうして……こんなこと、をっ」  ぼろ とその瞳から涙を零しながら、それでもΩは男を睨みつけた。  金と銀の双眸に射抜かれてやっと男は立ち上がって寝台の方へと歩みを進める。  随分と背が高いせいかそうするとαらしい雰囲気も相まって、絡まり合うΩ達を委縮させるには十分だった。 「ああ、美しいな」  男はまず侍従の紫の瞳を愛でるために、親指の腹でくるりと瞼を撫でる。  体同様の大きな指は少し力を込めると眼球を潰しかねない恐ろしさがあったが、侍従はそれを避けることができない。  ただ歯を食いしばるようにして耐え、指が離れて行く瞬間に本人にしかわからないような安堵の息を吐いただけだった。

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