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collector 5

   一糸まとわない格好だとしても、それを恥ずかしがるそぶりも見せない様子は、それがそれだけこの男が人目を気にする必要がない生活を送っていることを物語り、かしずかれるためだけに存在するのだと知らしめていた。 「お気に召すものを と」  差し出したタオルを受け取る手を止めて、男はふと首を傾げる。  先程コレクションに加えたΩはつい先日入手したばかりのもので、こうも立て続けに持ち込まれるのは今までにないことだったからだ。    見目よく、そして男が好む外見を持つΩは珍しい。  オッドアイのΩも、ようやっと手に入れることができたと言うのに、あれ以上面白い外見を持つΩがいると言う可能性に、男は興味を抱く。 「  ────通せ」     そう言う男の目が、まるで玩具を買って貰えると知った子供と同じ輝きなのだと、侍従はいつものように胸中で呟いた。  ルチャザ国の王宮の一角から眺める砂漠の風景を、商人はこの上もなく好ましく思っていた。  女の肢体のように滑らかな丘陵と金にも見えるキメの細かい砂で作り上げられた幻想的なそれを見渡せる場所は多くない。  この場に立ってその光景を眺めていると、一介の商人にしかすぎないこの身がやけに貴い存在になったように思わされて、いっときとは言え馬鹿げた夢を見せてくれる。  ガタン  薬で朦朧としているはずなのにまだ動く元気があるのか……と、景色を堪能するささやかな時間を邪魔されて商人はむっと顔を顰めた。 「ミスタースパロウ、殿下がいらっしゃいました。こちらへどうぞ」 「……はい」  燃えるような鮮やかな赤い髪を持つ侍従に返事をし、布を被せた見上げるほどに大きな荷物を睨み付ける。  名残のようにカタカタと音を響かせる商品に視線を残すようにして向き直ると、エメラルドの瞳が自身を睨みつけているのに気が付いた。  ああ、と商人は思い出す。  そう言えば幾つか前の商品ではなかったか……と。  それ以上は悪趣味と言ってしまえるほどの豪華な装飾品を身に着け、髪一本、爪の先の一欠けらに至るまで磨き上げられていると言うのに、その赤髪の侍従の目は昏い炎に照らされているかのようにらんらんと光っている。  妹の入院代のために奉公先を探していると言う身上だったのだから、有り余る財力に囲まれた今の生活に不服はないだろうに、どうして恨まれるのかわからずに商人は首を傾げた。 「お久しぶりですね、お元気そうで」 「っ   あん、たが、そんなことを言うのかっ」 「感謝されこそすれ、睨まれる覚えがなくて困っていたところなんです」  商人の言葉に、金のバングル……いや、手枷を嵌めた手がぎりぎりと音を立てる。

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