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ひざまずいてキス 8

 今にも崩れるんじゃないかってくらい古いこのアパートも、その中にあった服とかいろいろの生活用品も俺のじゃない。  全然趣味じゃない、ちょっと気取った感じのシャツに、いろいろ気にしてるのか消臭スプレーとかが置かれてて、最初にこの部屋を使えって言われた時はすべてがきちんと片付けられていて居心地が悪かったのを思い出した。  ナオちゃんは、片付けついでに俺の部屋を漁ってハメ撮りの入ってるUSBを探そうとしてるっぽいけど、あれは本当の俺の部屋に置いてあるんだって言ったら、この顔はどうなるんだろ?  ただの犬だと思っていたナオちゃんは、からかって……いや、付き合ってみると思いの外人間臭くて、あの取り澄まして何事にも動じませんって顔で大神の後ろをついて回っている姿とは全然違ってた。  こっちが、素なんだろうな。 「お前も見てないで手伝え!」 「やーだーよー。これはこれでどこに何があるってわかってんだから」  すっかり使うことに馴染んだベッドの上で横になって、すぐ傍のハンガーにかけられているナオちゃんのジャケットを見る。  あそこに、財布と携帯電話が入っているのは確認済みだ。    ────大神の情報を探ってこい。  うまくナオちゃんとの繋がりを持った俺に、おっさんはそう言ってこの部屋を用意した。  バイト先の写真をちらつかせながら…… 「ナオちゃん、ナーオーちゃんっ」 「うるさい!近所迷惑になるだろ!」 「ぜったいナオちゃんの方がうるさいって」  ぐっと口をひん曲げて、ベッドに横になる俺を見下ろすけど……それ以上は何もしない。 「でさ、こっち、カワイがってよ?」  くたびれたズボンをずらしてやると、ぐって言葉を詰まらせて視線を逸らすのは一瞬で、そのあと野良犬がそろそろと餌を食べにくるみたいにちょっとずつ近寄ってから、しかたなしってスタンスを変えないまま手を伸ばしてくる。  正直、男娼……あ、元男娼ってだけあってナオちゃんのテクニックって言うのは、今まで相手にしてきた誰よりもうまい。  舐めてた。  いや、舐めて貰ってるんだけど。    そうじゃなくて、体に染みついた感情?みたいな?  どろどろとかぬるぬるとかが嫌いって言う割には、すげぇ丁寧に舐めて……多分、無意識なんだろうけど、すげぇうまそうにしてる。  ……例え風呂に入ってない蒸れてるチ〇ポでも、キレイに舐めて喉奥まで突っ込んで扱いて、ナカに残ったせーしも吸い出して掃除してくれる。

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