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ひざまずいてキス 14
「あ、や、先輩……」
「いやだって、たまたまオナってるトコ見たから突っ込んで、ハメ撮りで脅しつけてる相手だろ?お前に好意を抱く理由がわからん。むしろ寝てる間に刺されてないのが謎ってもんだ」
ぷちぷちとリズムよく枝豆を食べながら、土田先輩はそう言ってはははと笑った。
「いや、でも、ほら、ヤってるうちに俺にメロメロになったとか……」
「今どきのAVでもない状況だな。古い奴か?題名教えろよ」
そう言って豪快にビールジョッキを空にして、もう一杯注文する。
ナオちゃんのあの態度がどう言ったものか説明して欲しくて相談したんだけど……
先輩の態度にむっと口をひん曲げてそっぽを向いた。
「え?で?相良はその子にどうしたいんだ?」
「あー……他の男と一緒にいて欲しくねぇって言うか」
あの大神から離れて欲しい んだけど、それを言った所であの犬みたいに後ろをついて回ってるナオちゃんがうんなんて言うはずがない。
第一にナオちゃんが大神の傍に居てくれないと情報が手に入らない……
手に入らないとおっちゃん達の店にちょっかいを出されて……
出されないためにはナオちゃんからの情報が必要で……
そのためにはナオちゃんは大神の傍に居なくちゃいけなくて……
元に戻ってきた話にうんざりして、先輩のようにジョッキを煽ろうとしたら手が伸びてそれを邪魔する。
「なんっすか?」
酒が入って赤い顔をしている上ににやにや笑うから、強面な先輩が更に強面になって、なんだか本業の人間のようだ。
素人が思わずぎょっとする見た目と言い、族を卒業してからずいぶん経つのに相変わらずだと溜息が出た。
「今日俺がお前を呼んだのはなんでだと思う?」
「カワイイ後輩の顔が見たいから?」
ちょっと首を傾げて可愛く言ってみたのが気に食わなかったらしい。
ごつんって殴られて呻く目の前に札びらがひらひらと揺れる。
「 ────っ!え?これ、もらえ 」
再びごつんと拳を下ろされて思わず涙が滲む。
こんなにすぐに手が出るのに教師やってるって言うんだから世の中不思議極まりない。
「これで盛大に勝ったからよう、ちょっと厄落としに奢ってやろうかと思ったんだがな?」
「おおおお!先輩太っ腹っすね!」
先輩のジェスチャーを見るに、馬か?
「ってことで酒はほどほどにして行こうか」
「え……奢ってくれるって言ったのに」
ジョッキを取り上げられて、それを一気に飲み干されてしまい……
ちびりと飲んだだけのビールを取られてさすがにむっとくるけれど、先輩に勝てる気がしなくてしょんぼりと項垂れる。
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