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ひざまずいてキス 16

  「 ────……」  画面に出た数字の列うんざりしながら先輩の腕を解き、すみませんと謝りながら電話に出る。  聞こえてくる声は……    反吐が出る気分にさせる大場商事のおっさんの声だった。  べっこべこに凹んだ事務机のある事務所に入れられて、なんだか学生時代に教師から説教食らっていた時を思い出す。 「んで?新しいネタは?」  電話で済む話なのにわざわざ呼び出して とか、コウリツ悪すぎて笑える。 「さぁー。ここんとこ立て込んでるって来てもらえないんで」 「はぁっ⁉」  突然大声を出すから、きっとこの人はなんかが不安定なんだろう。 「って言うか、もうずいぶんと情報を取って来たと思うんすけど?」  セックスでナオちゃんが落ちてる間やら風呂に行ってる間にいろいろと搔き集めて、よくわからん情報を片っ端からこいつに流した。  もう十分だろう?  いい加減イラっと来ておっさんを睨み返すと、一瞬怯んだ気配を見せてごほんとわざとらしい咳ばらいをする。  あれくらいでビビんなら偉そうにするなと笑ってやろうかと思ったが、そうするとまたぶちぶちとうるさくなるんだよなぁ…… 「大神の体に関する秘密を探ってこい」 「あ?」  思わずべっこべこの机を更に凸凹にしてやろうかと思ったが、それもなんとかぐっと堪えた。 「なに言ってんの?」  思いの外低い声が出たせいで、このハゲがびびってんのが妙にウケる。   「別に大神のナニの具合を聞きたいってんじゃない。あいつの性別を調べてこい」 「あ?」  あの筋肉ゴリラみたいな体と人でもひねり潰してきましたって顔のどこに女要素があるって言うんだ?  あ、いや、人は外見で判断すんなってじいちゃんが言ってたし……  意外と?意外と……  ねぇな。   「バース性の方だ」 「…………え?偉そうだから、えーとかあー?何とかでいいんじゃねぇの?」  ナオちゃんの免許証を見た時にえーって書いてあったから、大神は逆のなんたらだろ? 「大神はベータってことになってる」 「じゃあそれでいいだろ?」  わざわざわかっていることを回りくどいことをして調べさせる意味がわからん。 「本当にベータなのか?」 「は?」  おっさんのニヤニヤした笑いに反吐が出そうで、そっぽを向いて溜め息を吐いた。 「大神の親はベータとオメガだ、つまり大神はこのどちらかと言うわけだがぁ──……」  ひひ と笑うおっさんに、性別なんてなんだっていいと言ってやろうかと思う。  別に男だからってナオちゃんはそこら辺の女よりキレイだし、気持ちぃし、カワイイんだから。

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