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ひざまずいてキス 39

 俺はてっきり、あのまま内臓取られてどっかの山の中に埋められるとか、そんなことを考えていたんだけど。  全然そんなことはなくて、俺は治療を受けて今日退院って訳だ。 「感謝なら大神さんにするんだな」  そう言って偉そうにしているけど、あれだけ殴ってきた大神があっさり助けてくれるなんて思えない。 「でも止めてくれたの、ナオちゃんでしょ?」 「…………」  引き結んだ唇は何もしゃべらなくて、仏頂面のまま俺を睨む。 「入院中に看護師に手を出すなら助けなかった」 「あのっ  それはっ」  だって、触らせてくれるって言うからっ! 「まぁいい、行くぞ」  そう言うと俺の返事も待たずに病室を出て行くから、俺は慌てて後を追いかけるしかできなかった。  入院中に、満田の目的が大神の情報、特にバース性に関することだって言ったらナオちゃんは神妙な顔をしていて、満田が躍起になって探ろうとした理由がわかった気がした。  もうない組の、そんなシガラミのために俺ははめられて凹されたってのは、納得がいかない。   「んで?俺どうなるの?」 「は?」 「次はナニさせられるんかな?」 「は?」 「へ?」  ナオちゃんがきょとんとして俺を見ると、俺もきっとそんな顔をしてるんだって思う。  だって、ヤクザがなんの見返りもなく人を助けるとかって、あるわけないし。   「あのラーメン屋に戻らないのか?」 「戻れんの!?」 「他に行く所があるならそっちに送ってやるが……実家とは縁を切っているんだろう?」  う って言葉が詰まる。  あそこには親の葬式でも一生帰ることはないと思っているだけに、ナオちゃんたちがどこまで調べてるのかって心配になった。  もっとも、やんちゃしてた人生しかない分、隠すこともないけどな。 「おっちゃんの店でいいです」  すごすごと後ろについて歩いて、あっていいことを思いつく。 「ナオちゃんの家でもいいよ?せっかくだしさ、同棲とかどうよ?」 「…………」 「うわっぷ!」    歩くのを止めたナオちゃんの背にぶつかって慌てると、じろりと視線がこっちに向いた。  少なくとも肉体関係はあったんだしって気軽に言ったけど、直江の目は愛してるって言った相手に向ける視線じゃない。  それに、しょんぼりと肩を落とす。  退院まで面倒見てくれたってだけで御の字なのは十分わかってる。

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