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落ち穂拾い的な 生きてるからっ
「────生きてましたか」
そう声が聞こえる。
「君、ヘマはしないって言ってたでしょうが」
「不慮の事故はどこにでも転がっているものでしょう」
その声にぞわっと体に鳥肌が立ったけど、体はぴくりとも動かない。
「残念です」
「ご立腹だねぇ」
「ええ、直江がずいぶんと引っ掻き回されていましたから」
「お仕事の方は?」
「それは別に構いません。こんな事でどうこうなるような仕事の仕方はしていないので」
それは、俺が漏らした情報でいろんなことが起こったってことなんだろうか?
「後処理は終わったのかい?」
「ええ、大場には利子付きできっちり」
「ははは。そう」
「あとは……ブギーマンですが、やはり痕跡はありませんね」
「……髪の一本くらい落ちてそうだけどねぇ」
はぁと溜息が聞こえて、そのブギーなんとかがこいつらの悩みのタネだってことが良くわかった。
「で、大場は結局何が目的だったの?」
「私のバース性だそうですよ」
「はぁ?相変わらず下らないこと調べてるね」
「はは。他にすることがないんでしょう。まぁ当分は出てこれないでしょうから、大人しいはずです」
「出てこれないと言えば、奴の出所はもうじきじゃなかったかな」
その言葉に、大神の気配がぴりっとしたのを感じた。
さっきまで痛みなんて感じなかったのに、大神に蹴られた胸や擦られた頭がズキズキと痛んで思わず呻き声が零れる。
「お?起きるかな?だいぶ痛いんだろうねぇ」
「鎮痛剤は与えないでください」
「ははは」
「あのまま放置でもかまわなかったくらいですから」
「ぷぷぷっ君は大人げないねぇ」
「先生から見れば私だって子供でしょう」
「ああそう、そんなこと言っちゃう?それなら早く孫抱かせてよ」
「その子供じゃあないです」
「ははは」
こつん と靴が鳴る音がする。
「ではそれの後処理はお任せしますよ」
「処理って言うんじゃないよ」
「…………」
一瞬、睨みつけられた気配がした。
END.
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