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落ち穂拾い的な 内緒の話

   少しハスキーな、普段ヘラヘラとしている口調を感じさせない真剣な声。 「────ナオちゃん、聞いて」  ぎゅうっと抱き締めて来る腕が払えず、なすが儘に相良の腕の中へと納まった。  オレをすっぽりと包んだ腕の中で、頬がこめかみに擦り付けられて、その行為の甘さに逃げ出したくて逃げ出したくてたまらなかった。 「    。 ────、────   」 「   っ」  はっと視線を相良にやれば、少し困ったような顔をしてから、頂だけ触れる軽いキスをしてきた。 「  もいっかい言うね……好きだよ。ナオちゃんの事」  相良の言葉にぎゅっと体に力が入った。  この男はいつもそう繰り返すが、その言葉にどれだけの重みがあるのかは分かっていないらしい。  風俗に、  ヤクザの女に、  ナンパに、  どうしてこんな男に群がるんだって思うけれど、相良にはすぐに女が寄ってくるし、相良自身も来るもの拒まずだ。  そんな男の「好きだ」「愛してる」にどれだけの価値があるのか…… 「俺にはナオちゃんだけだってー!」 「うるさい」  信じる気なんてさらさらないのに、この腕から逃げ出すのはいつも苦労するのは内緒の話だ。    END.  

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