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手作りの楽園で 3
見上げなきゃならない身長に、体全体ががっしりしてて大きくて、羨ましいって言うかその体でぎゅうってされたら嬉しくなるだろうなって感じがする。
その腕の中にすっぽり入っていたら、安心できるんだろうなって心のどこかが理解している感じだった。
いつまでも見てたいなって思ったけど、学校の時間があるからそうはいかないんだよね。
「りーん」
覚悟を決めて声をかけようとした時、多郎太に呼ばれて飛び上がった。
「わっ!も……なんでばれるかな」
多郎太はずっともちと遊んでてそっちに集中してるんだとばかり思ってたし、僕は木の影にいて絶対見つからないって思ってたのに……
どうしてだか、多郎太とかくれんぼをすると必ず見つかってしまう。
多郎太は、僕を見つける名人だった。
「りんはいい匂いするからわかるよ」
「いい匂いって……」
シャンプー?
柔軟剤?
特に芳香剤を使うわけでもないから、きっとそこらあたりなんだろうけど、隠れてる場所がわかっちゃうくらいキツイ臭いってことなのかなぁ?
それはちょっとショックだなって、服の匂いを嗅いでみるけど良くわからなかった。
「もちを繋いでくるからちょっと待ってて」
僕の頭をくしゃくしゃって撫でて走って行く多郎太に、やめてよって声を上げるけど、本当はもっと撫でていて欲しいって思う。
真っ白なままの進路希望調査の紙を眺めながら、「決めた?」って多郎太に尋ねてみる。
とは言っても、多郎太はお家がお家だから神主の資格を取る方面に行くのは間違いなんだろうけど。
「りんは?」
逆に尋ね返されて……
返事ができないままそれを鞄に片付ける。
高校を卒業して、できるなら多郎太とその先も一緒に居たいなって思うけど、多郎太の進路と僕の進路は絶対に重ならないだろうから。
それを考えると将来を考えるって言うことが気鬱に感じてしょうがなかった。
「まぁ今回は進学か就職かだけ書いて出せばいいらしいし」
ぽんぽんと背中を叩きながら慰めるように言われて、曖昧に笑って返した。
目の前でぱんって手を合わされて、滅多に見ない多郎太のつむじが見えた。
「ごめんっバスケの助っ人行くの今日だった!」
「え……来週じゃなかったんだ」
放課後、さぁ帰ろうって言う時になって言われて……なんだか肩透かしを食らったような気がしてしまう。
いつも一緒に帰っているんだけど、運動神経のいい多郎太は助っ人に駆り出されることが時々あって、そんな時は図書館で時間を潰したり、試合を見たりするんだけど……
今日は早めに帰るようにって言われていたから、多郎太に合わせることができない日だった。
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