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手作りの楽園で 19

 階下からは、僕がΩになったのは誰の責任か言い争っている声が聞こえる。  三本の指でぐずぐずになったアナを弄りながら、Ωって何だったかなって思い出す。  このお尻がグズグズになっちゃうのがΩなんだろうか?  保健や歴史で少しだけ習ったけれど、人生で出会うことがあるかないかだからって言って、教科書を読んでおくようにって言われただけだった。  確か……なんだっけ?  ああ、そうだ、男でも赤ちゃんが産めるんだっけ?  多郎太の?  そう思うと、体中がゾクゾクと粟立ってくる。   「ぁ……あー……あ゛んっ!」  僕が甲高い喘ぎ声を出すと階下が一瞬だけ静まり返って、その後母親の泣き声が聞こえてくる。  でもそれも、もしかしたらここに多郎太の子供がいるかもしれないと言う思考にすべてが塗りつぶされて、嬉しさからくる震えで部屋の床を転がり回った。  男が子供を産むなんて荒唐無稽な話だし、頭では到底信じられなくてびっくりして、驚いて、あり得ないって思ってるのに、それが多郎太の遺伝子を引き継いでいるんだって思うと、胸の奥が震えて仕方がない。  これがΩだから思うのか、それとも相手が多郎太だから思うのか判別できなくて……  多郎太がいっぱいナカに出してくれた精液は、引き剥がされて引きずられるように家に帰って来た時にすべて流れ出てしまった。   「おなか……からっぽになっちゃった……」  臍の下を擦ってみたが、昼間いっぱいに満ちていた多郎太の精液も多郎太自身ももうそこにはない。 「ひ、ぅ  ゃあ……たろちゃ、たろちゃぁ……っ」  喪失感を思うと急に涙が溢れ出す。 「たろちゃんがいない! ここに、いないっ!」  皮膚を掻きむしって泣き喚きながら腹を探しても、どうにもならないことだってわかっているのに悲しみはどんどんと幾らでも湧き出してくる。 「たろちゃん……」  すすり泣いてみても多郎太からの返事は当然のようになくて……  ベッドに駆け寄ってそこに残された多郎太の匂いを探す。  すんすんと鼻を鳴らしてベッドに転がると、今まで気づかなかったのが不思議なくらいそこは多郎太の匂いがする。  ほぼ毎日、学校からは遠回りになるって言うのに僕の部屋で遊んでいたからかもしれない。 「いいにおい……する」  布団に身を横たえると、階下からの声も少しは聞こえにくくなって、ほっと胸を撫で下ろす。  ふわふわと鼻先をくすぐるのは多郎太の匂いで。  どうして今までこれに気づかなかったのか不思議だった。   「ぼく、いまたろちゃんにつつまれてるよ」  へへ……と口から出た言葉が自分自身で恥ずかしくて笑いが漏れる。  

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