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手作りの楽園で 20

 布団からは多郎太の清涼感のある水場のような香りがする。 「あー……たろちゃ ん……」  深く深く息を吸いこめば、少し収まっていたかなって思った熱がまた再びぶり返して……  脳裏に浮かぶのは教師達に引き剥がされながらこちらに向かって、懸命に手を伸ばしてくれていた姿だ。 「さみしぃ、さみしぃよ  」  くすんくすんと縋るように泣きながら、枕の匂いを嗅いで涎を垂らすアナを慰める。 「たろちゃ いつもみたいに、  」  いつもみたいに、  犯して、    犯して、  噛んで…… 「ひ、ぁ  っ」  自分の指が痛いくらいにアナが締まって、チ〇ポからは何も出てないのに体中にぎゅうっと力が入ってガクガクと震える。   「  ──── いつも?」  達したからか、ふっと人間らしい思考が浮かび上がって一つの疑問を突きつけた。 「僕、いつも?」  いつも、  僕は、  ここで、 「たろちゃんに……?」  そんな事実はないはずなのに、どうしてだかこの部屋のベッドの上で多郎太と絡まり合うイメージが離れない。  自分より太い腕で、大きな体で、ぎゅうぎゅうに抱き締められて、押さえつけられて、ほんの少しの逃げも許されなくて、苦しくて喘いでもそれも多郎太に塞がれて、  貪られて、  愛でられて、  犯されて、 「  ────っ」  ぶるっと体が震えておしりがまたぬるりと濡れた感触がする。 「たろちゃ……たろちゃん、ココ、愛してよぉ いつもみたいに」  強く抱き締めて。  噛んで。  多郎太のものだって刻みつけて欲しい。 「  たろちゃん」  鼻がすんすんと動く。  声が聞こえたわけでもなく、外から何か合図があったわけじゃないのにどうしてだかわかって窓の方へと駆け寄った。  慌てて窓を開けると、外の空気に混じってわずかに香るのは…… 「……たろちゃん……じゃ、ない?」    確かにそこにいるのは多郎太だって思ったのに、庭からこちらを見上げて静かにするようにって合図を送っているのは仙内だった。  なんで?  どうして? 「   っ」  多郎太じゃないのかと尋ねようとした時、鼻先を多郎太の匂いがかすめる。  それにはっとしたのを見逃さなかったのか、仙内は唇に押し当てていた人差し指をちょいちょいと曲げて手招く。  こちらにこい とのジェスチャーだったけど、ここは二階で僕に許された出入り口は窓しかない。  どうにもできないのに手招かれても……と困惑していると、また仙内が手招いた。  彼が手を振る度に多郎太の香りが強く匂って、腹の奥がきゅうっと切なく焦れる。  好きで、好きで、……堪らなく好きな匂いが自分を誘っているのだと、頭で考えるより本能が訴えかけた。

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