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落ち穂拾い的な 君と俺だけ

 いつその力に気づいたのかはわからない。  けれど気づいた時には、それがそう言う使い方が出来るものだとわかっていた。 「あそこ、こわい」  倫が震えながら指差すのは、実験のために俺の臭いをつけておいた公園の石碑だ。 「あー。あそこって、あの土台に人の骨が入ってるって聞いたことがある」  そう言うとこちらが驚くほど倫が飛び跳ねて、真っ青な顔をしていやいやと首を振って服を引っ張った。 「やだ、じゃあそばに行かない!こわい!」  こわい と繰り返して俺にすがる倫に、仄暗い心が満たされたのは言うまでもない。  これ がなんなのかは俺も知らない。  でも、俺の家の神社に伝わるお話では、神様は匂いを好まれ、臭いを嫌われたとあるから、これは不思議なものなのかもしれなかった。  全員が、分かるわけじゃないようだ。  親父は特に何も言ってこないけど、何か気付いているみたいだから親父はわかってるんだと思う。  あとは、犬のもちも何かわかってるっぽい。  俺が攻撃的なのを出すとちょっと不機嫌になるから……  試しに廃屋で試してみたら、いつの間にかお化けが出るって話になっていた。  逆は、できるんだろうか?  今までは倫を怖がらせるような臭いばっかりだったけど、倫が気に入るような匂いを出せば俺のことをもっと好きになってくれるかもしれない。  刺々しくない匂いで試してみると、倫の目がきらきらして見えた。  倫の目がきらきらすると、俺のとは違うハイビスカスみたいないい匂いがして、思わず抱き締めてしまった。  倫をぎゅぎゅうに抱き締めながら、ああ、これは俺のだって脳みその奥の方が叫んだ。  だから、倫は俺のものだし、倫は俺以外見ちゃいけないし、倫が他の奴といてもいけないし、倫が一人で出歩くのは許せないし、倫はここに閉じ込めておかなきゃいけない。  幸い、倫の家は町内の端っこにあって、駅とか学校とかに行こうとするなら必ず橋を通らないといけない。  だからそこに、毎日毎日俺の臭いを擦りこむ。  毎朝ランニングして、そこで休憩する振りをして、倫が怖がる場所にした。  そうすれば、倫はそこを通りたがらなくなって、俺の家の方の道を使わなくてはならなくなる。  学校に行くにも、遊びに行くにも俺と一緒じゃないと橋は通れない。  他の奴らに遊びに誘われても、それがあるから倫は断って俺と遊ぶ。  倫には、俺だけになる。     「  りーん、みっけ」  毎度、隠れているつもりらしいけど、倫の居場所はすぐにわかる。  倫からはいつもいい匂いがしてるから、どこにいるのかすぐにわかってしまうんだ。 「たろちゃん、なんですぐ見つけるんだよ」    不貞腐れているけれど、当たり前だろう?  倫ほどいい匂いの奴なんてこの世にいないんだから。 END.  

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