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落ち穂拾い的な お守り

 嗚女河神社のお守りを両手に包み込み、じっくりと俺の匂いを移す。 「ほら、新しいお守り」 「わっありがとう、これがないと……怖い夢ばっか見るんだよね」  俺が手渡したお守りを大事そうにポケットにしまう姿に、思わず笑みがこぼれそうになる。 「ちょ、笑わないでよ!」 「ごめんって。……で?どんな夢を見るの?」  意地悪くそう問いかけてやると、倫はちょっと間をとってからこてんと首を傾げる。  夢を思い出そうとしているのに思い出せてない様子に、ほっと胸を撫で下ろす。 「だ、だから、こわいんだって」  そう言う倫の耳が、無意識に赤く染まって、両目は潤んできらきらして、それからいい匂いが漂ってくる。  もじもじと膝を擦り合わせるような、そんな動きをしてそわそわと落ち着かない様子だ。  そりゃそうだ、  倫は夜ごと夢で俺に犯されてるんだから。 「ほ、ほんとだよ?怖い夢なんだって」  俺に圧し掛かられて、服を剥がれて、隅々まで舐め回されて、暴かれ、愛撫され、腰を掴んでその奥の奥まで犯されている夢を見ている。  あられもない恰好で、恥ずかしがり屋の倫が絶対にできないようなヤバい体位で、俺に好きなだけ犯されている。  覚えていないのは、このお守りに沁み込ませた俺の匂いのせい。 「いやお陰かな」 「なに?」 「なんでもない」  倫の部屋に沁み込ませた俺の匂いで犯して、お守りで忘れさせる。  でも、全部を忘れるわけじゃない。  少しずつ、  少しずつ、  俺とそうなることに、無意識よりも更に下の部分で慣れていけばいい。  そうすれば、俺を絶対に受け入れるだろう?  女がいいとか、  男同士だとか、  そんな下らないことで俺のことを拒否しなくなったら…… 「たろちゃんの意地悪、教えてくれてもいいのに」 「いつかな」    きょとんと見上げてくる顔に笑い返した。 END.    

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