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運命じゃない貴方と 3

 そんな相手にプライベートなことを話すような人だとは思えず、あかは立ち入れない壁を感じて身を引いた。  自分が脅しつけて傍に置いて貰えるようになったけれど、大神がどこまで許してくれるのかわからないまま、途方に暮れた気持ちのまままたぎゅっと体を竦ませる。    「  ────ずいぶんと、昔の話だ」  ぽつりと零された言葉は小さくて、静かとは言え走行中の車内では耳を澄ませなくてはいけないほどだった。    伝統だけはあるが時流に乗れず苦境に立っていた神楽組の一人娘である咲良と、新興ながら大勢力となった神鬼組の若頭である大神の縁組が組まれたのはある意味必然でもあった。    誰がどう見ても、ただお互いの歴史と資金が欲しいがための政略結婚だった。  身の丈が二メートル近い強面の大男と、そう言った家業の娘らしからぬ小柄でほっそりとした花のような少女の婚約に笑う者は多かったが、けれどどう言う巡り合わせだったのか二人の仲は親に決められたとは思えないほど仲睦まじかった。  たった一人の娘であり珍しい女Ωだと言うこともあり、箱入りで育てられた咲良が大神のような粗暴な人間に耐えられるのかと噂もされたが、本人達は気にすることすらない。  大きな体で不器用に咲良を気遣う姿を、周りの人間達は微笑ましく思っていた。     「  へぇ、あそこの娘、オメガや言うてなかったか?」 「  病気持ちなんか?はー……とんだ貧乏くじやないか。神鬼って言や、より取り見取りやろうになんでまた?」 「  神楽のとこには、神鬼の組長さんが若い頃に世話んなったんやと」 「  まぁ親が言えば否とは言えんわな」    咲良がΩと言うこともあり、口さがない人間達がやかましくいろいろと言っていたが、大神はそんなことは気にしてはいなかった。 「オメガは、病気ではないそうですよ」  鼻先を掠って行く煙草の煙に目を細めながら、大神は部屋の入り口からそう声をかける。 「あっ……」 「その、   」  気まずそうに男達は視線を合わせると、慌てて煙草を灰皿へと押し付けた。  隆々とした肉体を持つ大神に殴られればどうなるか、さすがにそれに考えが行かないほど馬鹿ではなかった男達は、へらへらと笑って「いや」「まぁ」と言葉を繰り返す。   「  随分とお待たせいたしました。場が整いましたのでどうぞ移動ください」 「あ、ああ、せやな」 「行きましょか」  鋭い眼光で男達が身を縮めて部屋を出て行くのを見送り、大神は男達が出て行った方とは反対側を振り返った。   「殴りつけてやればよかったか」  部屋の角からひょこりと黒い頭が覗く。  

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