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運命じゃない貴方と 10

「ササキさん!大丈夫なんですか!?こっちは俺等がしますから病院に行ってください!」 「…………」  きつく布が巻かれた手に視線を向けられたが、ササキは大神と咲良を見て緩く首を振る。   「今夜が終わるまでは……」 「そんなっ!」 「瀬能先生に痛み止めは打ってもらっている」 「でも……」  滝堂組の息子に噛み千切られた指はそんなことでは痛みは治まらないはずだ。  組員は青い顔をしながら窺うようにササキを見て、「俺達に任せられることは任せてください」と言って頭を下げた。 「若の祝言が終わったらひと段落する。それが済めばゆっくり養生させてもらうさ」  傍目に見ても具合の悪そうな咲良を、先刻の様子からは考えられないほど優しげに咲良に接しているのが見える。 「屋敷の警備を怠るな。万一のことがあってはならない」  予定されていたこととは言え、急な話だった。  皆慌ただしくしているし、浮足立っている。  何かを起こすならこう言う時だと、組員達に注意する。 「気を引き締めろ」  ササキは何事もないことを祈って、嬉しそうに寄り添う二人にもう一度目を遣った。  車が緩やかに停車して、あかははっと顔を上げる。  ぽつりぽつりと語っていた大神の言葉が止まり、溜め息のように紫煙を吐き出してから、直江が開いたドアから出ていく。 「あっちょ……っ」    あかはその背中を追いかけて慌てて降りると、大神は立ち止まってあかが降りるのを待っているようだった。 「は、話しの続きは!?」  中途半端なところで途切れてしまった話に、あかは大神の横に並びながら尋ねるがその横顔は何も語ろうとはしない。  更に続きを尋ねようとしたが、直江がじっとこちらを見ているのをみて口を閉ざす。  狭い車内でパーティションを下ろして話をしたのだから、直江にすら聞かれたくない話なのだろう……と。  あかは大神について大きなマンションに入り、きょろきょろと辺りを見渡す。  自分の底辺の生活とは縁遠かった光り輝くような建物に気後れして、あかはエントランスでぽつんと立ち尽くした。  所在無げな自分と違い、馴れた様子で歩いて行く後姿を見送る。 「どうした?」 「あ……あの、俺、降りてよかったの?」  顔が映るほど艶のある床に目を落として、改めて自分の世界との違いに怯える姿を見せた。   「何を馬鹿なことを言っている。俺に引っ付いてくると言っていたのはお前だろう」  直江はこくりと頷くとあかの傍に駆け寄って歩くように促す。  

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