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運命じゃない貴方と 13
監視カメラを見直させている間に目立たない程度の人数を外に探しに行かせる。
混乱しそうになる頭に活を入れて状況を整理して、ササキは低く呻く。
「……幾ら浮足立っていたからと、この人数が集まっているところから人を攫えるものか……?」
疑問の形を取っていたが、それが不可能なことはササキ自身が良くわかっていた。
この家はそう易々と侵入を許すような作りにはなっていないし、ましてや咲良のいた大神の部屋は奥まっていたところにある。
それに待望の初夜だと言っても、あの大神が侵入者に気づかないほど気を緩めるとは考え難い。
けれどそれと同等に、咲良が姿を消すのも考え難かった。
「……何が起きてるんだ」
あの男でも逃げ出したくなるような風体の大神と仲睦まじくしていた姿は実は取り繕われたもので、逃げ出すタイミングを見計らっていたのだろうか?
それとも、これも神楽組からのなんらかの指示だったのか……
「新興の私達を気に食わない様子があるにはあったが」
もっとも、だからと言って一人娘をそんなことのために使うとは、神楽組の様子を見ていて到底思えない。
「とは言え、一番しっくりくるのは自分から出ていったってことだが……」
そこでまた堂々巡りの思考に入りそうになり、ササキは苛々と頭を掻いた。
咲良の今までの行動を細かく思い出しておかしいことなどなかったかと考えてみるも、多少天真爛漫すぎる所があるくらいで気になるようなところは一つもない。
そこまで考えて、ササキはふと腕の先を見た。
包帯でしっかり巻かれて、今は薬のお陰で鈍い痛みがするだけだ。
滝堂組の息子に会った時の咲良の様子だけは、おかしかった……と顔をしかめる。
「あそこの息子はアルファだとか聞いたことがあるが」
αやΩなど言われても、ササキにはまったく関係のないことだった。
自身が支える大神は体格風貌頭脳と、どれ一つとっても安易にそこらに転がっているような男ではない。
ゆえに、ササキは大神の妻となる咲良のために学びはしたが、第二の性なんてものは血液型くらいの違いだとしか思っていなかったが……
「……運命の、……何と言ったか?」
αとΩの間にだけある特別な絆だったか と、ササキはしかめた顔を更にしかめて見せる。
もし二人がソレで、ソレを理由に咲良が自らここを出ていったのだとしたら……と、馬鹿馬鹿しい考えに至ったところで笑いを零す。
「ありえんだろう、そんな下らないこと」
あれだけ睦まじくしておきながら、たった一目会っただけの男に惚れて出ていったのだとしたら?
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