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運命じゃない貴方と 17

「僕はオメガなんてものにはとんと興味がなくてね、君の頼みじゃなければ診たくもない」 「おい」  きつい声に瀬能は肩をすくめると、痛み止めだよと言って薬を手渡す。 「ただ、今回が初めてのヒートだったよね」 「ああ」 「薬は控えた方がいいかもしれない。初めてのヒートは着床率が段違いと聞くからな」  瀬能から薬袋を受け取り、大神はまだ何か問いたそうに瀬能を見る。 「なんだい?」 「何か言ってなかったか」 「……」    先ほどと同じように肩をすくめてみせると、瀬能は何も言わずに歩き出す。  咲良が何も言わなかった と取るべきか、医者として守秘義務を貫いたとみるべきか……と、大神は眉間に皺を寄せた。 「ササキ」 「  はい」 「警備に当たっていたものを集めろ、処罰は任せる」 「はい」 「それから、ここには誰も近づけさせるな」  短い大神からの言葉に、ササキは深く頭を下げてみせる。    視界の先の大神の爪先が動いて部屋の中へと入って行く。  その中で何が話されるのか、咲良がどう言った言い訳をするのか盗み聞きしてみたい欲望に駆られもしたが、ササキは大神の勘のよさにそれを断念する。  幾ら気配を殺ししても大神ならば気づくだろう。    それに、自分のやるべきことは警備に任命されていたのにそれを行えなかった奴らへの制裁なのだからと、ササキは歩き出した。 「それで、どうなった?」  背中に感じる大神の胸板に後頭部を擦りつけながら、あかは止まった話の続きを促すように声をかける。 「どうも」 「どうも?……何もなかったの?……です」  そう問いかけながら、あかは大神の大きくてゴツゴツした手を持ち上げていじいじと撫で廻す。  促してはみたものの大神は続きを喋り出す気配を見せず、焦れたように後ろを振り返った。  その表情は……  うるさく続きを聞こうとしてあかは口を閉ざす。  病院でのやり取りを見て、大神の話を聞いて……  あの女性が大神にとってどれほど大事なのわからないはずもなくて……  あかはなすがままになっている大神の手に頭を乗せる。 「顔を上げてないと茹だるぞ」 「……」  そう言われてしまうとどうしようもできず、渋々顔を上げて再び大神の胸に頭を預けると、よくやったと言わんばかりに大きな手が撫でて行く。 「……、今も、好き?  なんですか?」 「なんだそれは」  馬鹿にするような、呆れ返るような声を出し、大神はやはりまたぽつりと話し始める。      小さな手に指を握られて、大神は戸惑って顔を険しくさせた。  それは自分の息子と初対面した男のものとは思えず、咲良は疲れた顔に小さく笑みを浮かべる。 「なんでそんな顔なん?」 「……いや、もう少し頑丈なものかと…………」 「そんな訳ないやん?」  咲良はそう言うとふふ、と吹き出す。  

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