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落ち穂拾い的な イントネーション

 ばたばたっとしずるとセキが飛び込んできたことに、研究所で話し合いをしていた瀬能と大神は顔をしかめてみせた。  お互いの視線の先にあった書類を下ろし、険しい顔で二人に向き直る。 「しずる君、セキ君、ここでは走らないって小学生でも習うようなことを覚えてるかな?」  珍しく怒りをあらわにした瀬能に、二人は「う……」と肩を落として項垂れた。 「すみません」 「ごめんなさい」  しょんぼりとした姿に、瀬能ははぁと溜め息を吐いて椅子の背もたれに体重を預ける。 「ちょっと休憩にしようか」 「わかりました。直江」  視線を向けられて、直江は「お茶を貰ってきます」と言って部屋を出て行く。 「で?そんな状態で来るなんて、何があったんだい?」  瀬能が重心を動かす度にぎしぎしと椅子が小さく軋みの音を立てた。  怒られるかと思っていた二人ははっと目を見合わせて嬉し気に声を上げる。 「「関〇電気保安協会って言ってくださいっ!」」  「は?」と瀬能は言ったものの、「関〇電気保安協会」とすらりと答えてから器用にぱちんとウインクまでしてみせる。 「「大神さんはっ?」」  二人に勢いよく言われて、大神の眉間にぐっと皺が寄った。 「くだらん、帰れ」  二人の首根っこを掴んで放り出そうとするが、それよりも早くセキがぎゅっと大神にしがみつく。 「大神さんっ!一回だけ!そしたら素直に帰るからぁ!」  じっと見上げられ、さすがの大神も居心地悪そうに視線を逸らしてから「か……」と呻くような声を出す。 「か、ん……さい、電気、ほ……ん、……」  ぐっと眉間の皺が深くなるのを見て、瀬能がたまりかねてぷーっと噴き出した。 「あははははははっ!」  腹を抱えて笑うせいで、椅子がぎしぎしとさらに大きく音を立ててまるで悲鳴のようだ。 「  っ、これでいいだろう」    低く威嚇するような声を出して、大神は二人の首根っこを掴んで外へと放り出した。  尻を打ったのか「ぎゃっ」と言う小さな悲鳴が響いたけれど、それに構わず大神はバタンと勢いよく扉を閉める。 「三つ子のって言うからね、言葉の癖はなかなか抜けないものだよ」 「…………」 「咲良さんのお母さんがそちらの人だったかな?」 「そう聞いています」  努めて平静を装う姿に、瀬能はもう一度ぷっと噴き出した。   END.    

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