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乞い願い慕い犯す 3
「は……裸で、寝転んでる」
颯の言うことはもっともだった。
けれど先程と同じように私が求めている答えはそうではない。
彼にはこれからのことも考えてよくよく考えて喋る癖をつけて貰わないと困る。
一つ一つその場で指示して行くのもそれはそれで楽しいとは思えるけれど、度が過ぎれば興醒めだ。
「いつ?どこで?誰が?何を?」
「ほ……放課後の、学校、でっ……おれ……」
こちらを窺う表情に首を傾げてやると、「堂本颯が」と言い直した。
それから先、言葉を探しているのか迷うように唇がパクパクと動く。
「はだか……で、ね……」
そこまで言って喋るのをやめてしまった。
これでは先程と同じだと気づいたのだろう。
ガタガタと震える体に身を寄せて、耳元で小さく答えを教える。
「 ────っ!?」
「さぁ」
促してまた携帯電話をトントンと叩く。
「ぃ、や……らし から、だ。の、し……しりの っ」
蒼白だった顔色が羞恥に赤く染まって、私からすればなんてことはないただの五文字を絞り出そうとしている。
「……を、み、えるように……ひ、拡げて……」
もごもごと言うことで誤魔化せたと思っているのだろうか?
とは言え、まぁいい。
フット・イン・ザ・ドアと言う言葉もあるのだし……
「では、私がこれからして行くことを言葉で教えてくれるかな」
「は?」
普段は利発で察しのいい彼がどうしてこうもこの瞬間愚鈍なのか甚だ疑問ではあったけれど、それも彼の瞳を覗き込んですべてがわかった。
恐れて、怯えているのだと。
私からしてみればそれは酷く遺憾で、誤解しないで欲しいのだけれども私は彼のことを愛してやまないのだ。
ああ、違う、恐れでも怯えでもなく、緊張していただけだ。
「私が今からすることを、君の口で一つずつ実況してもらえるかな?」
「なに……を…………」
まず手始めに彼の立てられたままになっている膝に触れた。
初めて彼に触れるのだから、特別な場所を……と考えていたのだけれど、部活で擦りむいたのだろう傷跡がわずかに見て取れるそこに惹かれた。
「さぁ」
「……膝、を、触った」
震えながら、それでも言葉を紡げたことにほっとする姿を眺め、触れたところを舌で舐める。
舌先ではなく、目一杯広げた舌で少しでも広範囲を舐められるように。
「 ひっ」
彼の震えはますます激しくなり、足首を握った手が爪を立てている。
「さぁ」
彼を促す言葉は同じだ。
「し、した……で、膝をなめ た」
「もっと詳しく」
「……した、で」
小刻みにわななく唇は今にも悲鳴を上げそうだ。
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