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乞い願い慕い犯す 21

「じゃあ杠葉は散々犯されて股から垂れた精液欲しさに床を這いずって舐めると?」 「誰もそんなこと言っていないっ!」  怒声はびりびりと鼓膜を刺激する。  明らかな怒り……ではなく、殺意にも似た感情だろう。    彼は今、私のことを殺したいほど思ってくれているのだ。  彼の特別な感情が、私に向いている。  それだけで、彼の処女を散らしたことよりも更なる愉悦が責め苛む。  なんて幸せなのだろう。  彼は、この瞬間、私だけを真っ直ぐに見ている。  相も変わらず、屋上で煙草を噴かす。  何も変わらない、ただいつもの日常だ。  ────~~ ~~ ~~  手の中で震えた携帯電話に目を遣ると、それまで平凡な日々だと、波風も立たず幸せだと感じていたことが瓦解した。  ディスプレイには、「家」とだけの素っ気ない表示。 「  ────……」  一瞬切れるまで放り出しておくことも考えたけれど、それはただ問題の先延ばしにしか過ぎない。 「  はい」  通話ボタンを押すと、相手も私が出るとは思っていなかったのか言葉を詰まらしたような気配がした。  連絡してきたくせに、会話を望んでいなかったのだとありありと分かる潔くない態度に、反吐が出そうになって「何か?」と促す。 「   お母さんの法事だけど」  こちらが水を向けたにもかかわらず、電話の向こうの声が返ってきたのはしばらくしてからだった。 「私が出ない方がいいでしょう」 「……」 「では」 「ま、待ちなさいよっ!いったいいつまで不貞腐れてるのよ!」  甲高く上がった声の見当違いの甚だしさに、思わず「はは」と笑いが漏れる。 「そうは仰られても、私はそちらの家とは縁のない人間ですので」 「はぁ⁉あんたそれ、お母さんの墓前でも言えるわけ!?あんたのせいでお母さんがどれだけ酷い目に遭ったと思っているのよ!」 「そうですね、率先して唾を吐きかけてらしたのは貴女ですから、よくご存じでしょう」 「っ!」  短くなった煙草をコンクリートに押しつけると黒い筋が後に残った。  それは鬱陶しいほど染みついて消えない過去のようで……   「あんたがお母さんを追い詰めたんでしょう⁉」 「あの当時、彼女に汚らわしいや出て行け、淫売は親じゃないなどの暴言を吐かれていた方の言葉とは思えません」 「あんたが原因なのにどうして私に言うのよ!」 「貴女の『どこの種がもわからない赤ん坊を恥ずかしげもなく産み落として、恥を知りなよ!死ね!罪は死んで償え!』と言った言葉を受けて命を絶たれたんですよ。もうお忘れですか?」  片手で煙草を取り出し、火をつける。  新しい煙に自然としかめ面になってしまう。

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