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乞い願い慕い犯す 43

   穴の開いた携帯電話の画面を彼に突きつける間にも、スピーカーからは粘つく音と卑猥な言葉が流れ続ける。  『ま〇こ犯してぇ!  おち〇ぽ様の先っぽで、奥ぐりぐりしてぇっ』 「残念だ」 「……ぁ、……な、  」  ぶるぶると震える彼が崩れ落ち、呻くような声が零れ落ちた。  スピーカーを通して聞き馴染んだ声が嬌声を上げる度に、震えは大きくなって顔からはどんどん血の気が引いていく。 「なに、なんで、どうして、  」 「約束を守るなら、こちらも守ると言っただろう?」  『あぁ  んっ、ザーメンっおち〇ぽみるく、おいし、……ぅ、んぁ! やだっやだっ!おち〇ぽ様抜いちゃ   』  ひぃ と小さな悲鳴が漏れて、彼が耳を塞いで突っ伏した。    『ぁ゛、ンっ、ゆ、ゆずりは、はぁ  っおち〇ぽ様が大好きで、おち〇ぽ様にけつま〇こ犯されながら、使いみちのない赤ちゃん汁をびゅーびゅーするのがぁ、だい、好きっ!めくれるくらい激しく、じゅぽじゅぽされて、メスイキガチアクメきめ   』  「ひぃ」と引き攣るような声を最後に、彼はうずくまって動かなくなってしまった。  こつん、こつん、と携帯電話の角を机にぶつけながら何を見るともなく外に視線を移す。  普通の人間ならば気を落ち着けることができそうな穏やかな夕暮れだったけれど、母が亡くなった時とよく似ていると思ってしまった時点で心の中は穏やかとは言えない状況だった。  首を括るフリをする前、憔悴しきった母は私の首を絞めながら確かに言った。  『ベータなんかと浮気するんじゃなかった』  金切り声の呪いのような言葉が、首を絞められて朦朧とする意識の中でもはっきりと聞き取れて……  母が繰り返し父に無実だと、何かの間違いだと訴え続けていた言葉は何だったのかと。  父に首を噛まれていながら、それでも気の多さを治めることができなかった母。    吐き気止めを飲みながら、それでも浮気を続けていた母は、自分に冷たくなった父を繋ぎとめるために 「あれは……苦しかったな  」  細い指だったせいか柔らかな首の肉にぎゅうぎゅうと容赦なく食い込んで、血管が塞がれたせいか息ができないと思うよりも前に脳味噌が腫れたようなぼんやりとした感覚と耳鳴りが襲いかかってきて……  意識が朦朧として死体のように床に転がるのはあっと言う間だった。  酸素が足りなくてひゅーひゅー息を吐く私を満足げに見下ろし、母はさっと背を向けた。    父の帰宅に合わせて、首を括ろうと言う瞬間を見せるためにタイミングを見計らっている母をぼんやりと眺めながら、「なんでこんなことに」「避妊はしたのに」と繰り返す言葉を聞いていた。  

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