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落ち穂拾い的な その後
カタン と音がして玄関の鍵が開く音がする。
「 ただい っ!何やってるんですか?」
「うん?いや、電球を替えてしまおうと思って」
そう言って振り返った拍子に、バランスを崩しそうになって思わず両手をバタつかせた。
「先生っ!」
さっと駆け寄って私を抱き留めた彼は、外の匂いと汗の匂いがする。
「俺が帰ったらするって言ったでしょう⁉」
「いや、もう日も沈んでしまうだろう?」
「だから走って帰って来たんでしょう⁉」
怒りが収まらないようで、彼は……颯は私を椅子から引きずり下ろして代わりに椅子の上に立つ。
私が背伸びしてやっと届く箇所へ手を伸ばし、あっと言う間に電灯を替えてしまった。
「どうして数分が待てないんです?」
「うん?帰って来た時に暗いと気が沈むじゃないか」
「あーもーっ」
そんなことぐらいで……と言いたげな言葉に苦笑を返す。
「大事なことだろう?」
苦笑ついでに片眉を上げて言ってやると、反論を諦めた顔が溜息を吐く。
……と、もう一度玄関の方でがちゃんと音が響いた。
「あーもーお腹空いたぁ」
弾けるような明るい声は、電気のつかない部屋よりも明るい部屋の方が似合いそうだ。
「せんせぇ!今日の晩御飯何?」
バタバタと駆けるようにリビングに入ってくると、ソファーに鞄を投げ置いて私達の間に割り込んでくる。
「その前に言うことがあるんじゃないのか?」
「あっ、ただいま」
「「おかえり」」
彼と共に声を揃えて言ってやると、杠葉はにこにこと嬉しそうに笑って返す。
「今日は酢豚を作ったよ」
そう言いながら椅子をテーブルへと戻すと、椅子が三つ揃った食卓が完成する。
「パイナップル入れてないですよね?」
「……好き嫌いは良くないよ」
とんとん と彼の肩を叩いて言ってやると、少し複雑そうな顔を返された。
END.
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