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晴と雨の××× 6
昼休みに隣の席の奴が食堂に案内してくれるはずだったんだけど、早口でそれを断りながら鞄を掴んで教室を飛び出す。
教室を出た時、茶色いふわふわとしたとした頭が教卓の傍に居るのが見えて……
「 っくっそ」
ばたばたっと廊下を駆け出し、中央下足室へと段を抜かしながら駆け降りる。
「く そっくそっ」
呻く声は弾む息でろくろく出ない。
下足箱にしがみつくように辿り着くと、履き替える間も惜しんで外へと駆け出そうとした。
「こーたくん!」
上から降ってきた声に足が止まる。
昼休みになって、まばらに人がいると言っても俺の周りに人影はない。
「っ!?」
思わずさっと背後を見回すも誰の姿も……いや、虎徹の姿はなかった。
まるでお化け屋敷にいる気分でそろそろと上を見上げると、下足室の上にある廊下からひょいと小さな体が飛び降りる所だった。
白衣とスカートが広がって、思わずぱちんと目を瞬かせる。
「ぅ、わっ」
逃げなきゃと思うのに、咄嗟に腕が出て飛び降りてきた体を受け止めようとする。
「う゛っおもっ!」
「こたくーんっ!会いたかったよぉ!」
ふわりと落ちてきたから軽いんじゃないかと思わせるが、虎徹を受け止めきれずに地面へとばたりと倒れ込む。
お陰で眼鏡が飛んで行って……
視界は意味不明だ。
でも、目の前に誰がいるかだけははっきり分かる。
「受け止めてくれるなんてこたくんやっさしい!」
語尾にきらきらとした何かをつけているかのような口調でそう言うと、虎徹はずいっと顔を近づけて……
俺が人の顔を認識できるギリギリまで近寄った虎徹の顔は、どうにもこうにも見た目だけで言うなら可愛くて仕方がない。
「受け止めたくて受け止めたんじゃねぇよ」
とっさの行動だったんだって呻きながら言うのに、それでも虎徹は嬉しそうにニコニコしている。
「 っ、てか、どけよ」
虎徹は俺の膝の上に乗ったまま、きょとんと首を傾げてすっとぼけてみせた。
「どうして?やっとこたくんと会えたのに?」
「……」
ぐっと言葉を詰まらせながら、とりあえず命綱である眼鏡を探して辺りをて探る。
「ぁっんっ!こたくんのえっち!そんなとこ触っちゃダメ!」
よく通る大きな声でそんなことを叫ぶから……
それでなくても集中していた周りの視線が俺にチクチク刺さるようになってしまう。
「いやいやっ!俺どこも触ってないだろ⁉」
「そんっそんなことないよっ!スカートの中に手を入れられて……僕もうお嫁にいけない!」
「もともといけねぇだろ!」
男のクセにと怒鳴りそうになったが、周りの視線の痛さに思わず口を噤んだ。
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