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晴と雨の××× 7
「ふふふ。こたくん!もうずっと一緒だよ!」
思わずこちらが赤面してしまうほどのいい笑顔で言われたけれど、俺は血の気を引かせるしかできない。
こいつから逃げるために、こんなところまできたっていうのに……
虎徹と俺との出会いは雨が降り始めた朝のことだった。
いつも通り、晴れの天気予報だったのに空は急に曇り始めて……傘をさして高校へと向かう途中で、中学生に声をかけられた。
いや、中学生だって勝手に思い込んでただけなんだけど、それが虎徹で……
転校生かと思いきや、うちの学校に教育学習に来ていたのだと知った時にはびっくりした。
それから、なんやかんやで……
「はしょっちゃメ!」
「……人の頭の中を読むな」
そう言って騒がしい食堂の端に陣取ってうどんを啜る。
なんやかんやで……付きまとわれてる。
「違う!お付き合いしてるのっ」
「だから読むなって」
追加の七味唐辛子を振り入れ、一気に残りの麺を啜ってしまうと立ち上がった。
「あっちょっ、待って!」
ちまちまとした手で一生懸命かつ丼を頬張る虎徹を置いて、さっさと食器を片付けて教室に向かう。
俺達の関係を言い表すなら……付き合っていた……のかもしれない、程度だと思ってくれていい。
虎徹が言ったように、ふわっと、軽ーく、なんとなく、そんな感じだった時もあったわけだ。
一人暮らしの俺の部屋に虎徹が転がり込んだり追い出したり、追いかけられたり逃げ回ったり、そんな関係だった。
「こたくんこたくん!待ってー!」
「…………」
「こたくん、相変わらず食べるの早いねぇ、ちゃんと噛まないと駄目だよ?」
「…………」
「あと、刺激物あんまりいっぱいとったら駄目だよ?」
「…………」
「精液が辛くなっちゃうぞ?」
「そんな話聞いたことねぇよ!」
思わず振り返ると、ぱぁっと華やかな笑顔が俺を見上げている。
「えへへ、こっち向いてくれたー!」
「…………」
ぐ と言葉を詰まらせて、また教室に向かって歩き出す。
朝にざっくり担任から説明を受けただけだったけれど、学校の作りなんてそう複雑な物じゃないからか迷うことはなかった。
予鈴を聞いて、教室に戻る足を速める。
「ねーねーねーこたくんこたくん」
「…………」
「こたくん!」
呼び止める虎徹の言葉を無視しようとした瞬間、
「僕の初めて奪ったくせに酷い―っ!」
って、大きな声が背中を打った。
予鈴に慌ただしくなっていた周囲がしんと静まり返って……
涙目で立つ虎徹と、それを無視しようとしている俺とが注目の的になったのは言うまでもない。
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