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晴と雨の××× 8

 周りのこちらを見る目の冷たさに震えがきそうだ。 「ちょ……おま、なにい  」 「こたくんのためならどんな恥ずかしいこともやったのにっ!」 「んなことさせてなんか  」 「これ着ろって言って、裸エプロンさせたのはだれなのーっ!?」 「っ!?」  とっさに反論できなかった俺の姿を見て、周りの目が更に冷たくて震えどころか凍りつきそうだ。 「  ち、ちょ、そん、や、だって、そ、あれ、  」  周りからのプレッシャーで言葉がうまく出ず、もう傍から見たら俺が図星を突かれて動揺しているようにしか見えないんだろう。  でもっ普段こいつが裸族で、その状態で油物なんてするからエプロンつけろって言った……なんて説明をしても、この雰囲気の中では聞いて貰えるかどうか…… 「あれは   」  あれはー…… 「あれはお前だって同意したことだろ」  ぼそぼそと出た言葉が最低男のいいわけのようで、思わず口を塞いでもどうにもならない。  ゲスな男の言い訳みたいなことを言った俺の耳に、本鈴のチャイムが聞こえてきた。  昼休み前まで好意的に話しかけてくれていた隣の席の奴と目が合わなくなった……加えてクラスの女子たちの視線と雰囲気に心が砕け散りそうだ。  さすがに教師にまで噂が行っているわけではないようで授業に支障はないけれど、これは後々学校生活に支障が出るんじゃないかと溜息を吐いて外を見た。    抜けるような青い空には雲一つない。  ご機嫌 と言う言葉を表わすに相応しい晴天に、小さく呻くことしかできなかった。  俺に用意されたのはマンションの一室だ。  研究所に住まわせられるのかと身構えもしたけれど、幸いそこは自由のようだった。  研究所がマンションを一棟借り上げで使用しているため、関係者以外入ることはないと説明を受けた。  そんな六階建ての五階の中央が俺の新しい部屋で、中に入ると自分の家じゃない匂いがする。  家具家電も用意すると言われていたので思い入れのあるもの以外はすべて新しく、それらの匂いもあって俺の家だと言うのにひどく余所余所しい。  それに、すぐに必要な荷物は解いたけれど、急がないものはまだまだ段ボールに入れて積み上げたままで……  ままで……  ままのはずだったのに…… 「なんっ……なんでお前がいるんだよっ!」  そう叫んだ俺の視線の先で、ピンクのフリルエプロン姿の虎徹が段ボールを折り畳んでいるところだった。 「え?だって、こたくんまだ片付け終わってないんだもんーお手伝いがいるでしょ?」  えへへ と可愛らしく笑ってみせるが、家に帰ったら他人が家事をしていた……なんて、ただの警察通報案件だ。

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