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晴と雨の××× 9

「冬ものはクローゼットの奥ね、溜まってた洗濯物は今洗ってるから後で干すね」  ぱたぱたとどこに何があるのか熟知した動きでタオルを取り出し、「お風呂に行っておいでよ!」と言って着替えと共に差し出してくる。 「い……や、いやいやいや!おかしいだろっ!なんであれだけ叫んでおいて、なんでまだ裸エプロンなんだよっ!」 「あ、そこを突っ込むんだ」 「おまっ  あの叫びのせいで俺がどれだけ冷たい目で見られてるかっ!」 「僕は職員室にいたからわっかんなーい」  えへへ と言いつつ肩をすくめるから、ピンクのフリルの間から平らな胸が見えて…… 「背中流しに行くよ?」 「一人で入るっ!」  そう怒鳴って虎徹の手から着替えをもぎ取ると、ちょっと寂しそうな顔をする。 「一人でぇ、できる?」  可愛らしい顔で上目遣いに意味ありげに問われてしまうと、年頃のオトコノコとしては何も感じないわけがなくて…… 「   うっせぇ」 「んふふふー反抗期だぁ」 「違ぇよ」  つっけんどんに言い返して浴室に繋がる洗面所に入ったところで、俺の突っ込むべき所はフリルエプロンなんかじゃなくて、虎徹がどうやってこの部屋に入ったのかだったことに気がついた。  すりガラスの向こうで仁王立ちになっている虎徹と、浴室の扉を全力で押さえている俺と…… 「こたくんっさーむーいーっ風邪ひいちゃう!お風呂いれて!」 「この時季のどこが寒いんだっ!あと寒いんだったら服着ろっこの裸族っ‼」 「だって!こたくんが喜ぶからっ」 「喜ばねぇよっ」  そう返す俺の手に力が籠る。  俺は確かに、風呂に入る前に洗面所の鍵をかけたはず。 「じゃあ、こたくんの奥さんらしく背中流させてー?」 「そんなポジションじゃねぇぞ!?」 「えっ……じゃあ旦那さん?」 「ってか出てけっ!いい加減のぼせるっ」 「のぼせたらベッドまで運んであげるよー?」 「そうじゃねぇよっ!」  虎徹が洗面所から出て行けば万事解決するんだと言うも、虎徹は相変わらずののらりくらりとした雰囲気で、話しが通じてるのかどうなのかすらわからない。  ここに引っ越してくる前までの、どたばたとした俺達のやりとりのその延長で……  あまりの普通っぷりにこいつから逃げ出したのは夢だったんだろうかと思ってしまう。  それに、虎徹は虎徹で、いきなりいなくなった俺に対して恨み言の一つでも言うべきなのに何も言わないのはどうしてなんだろうか? 「…………」  ある日突然、親しい……と言うか、付き合って……いるようないないような?そんな相手が音信不通になって、突然引っ越して、何も思わないわけがない。  

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