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晴と雨の××× 11

 戻っては駄目なんだ。  ごくりと唾を飲み下して項垂れ、水滴の伝う足に目を遣る。    今、泣きそうな虎徹の声を聞いたらその決心が掻き消えてしまうそうだったから、虎徹の声が聞こえないように耳を塞いだ。   「だから、も    」  「もう会わない」って言葉を告げようとした瞬間、頭の天辺に走った衝撃のせいで言葉を失い、ついでに意識も失ってしまった。  学校の、素行の悪い生徒に絡まれているのを見た時、考えるとかいろいろ思うとかよりも先に体が動いた。  別に喧嘩が強かったわけじゃないし、何なら普段はそう言った生徒達から目をつけられないように距離を置こうとするくらいだ。  それでなくても雨男ってことで悪目立ちしているのに、更に目立つようなことなんて……  関わり合いたくない……って思う筈なのに、見上げなきゃいけない不良たちに囲まれている虎徹を見た途端、どうしようもない焦燥に駆られて虎徹と不良たちの間に割り込んだ。  怖くて仕方なかったけれど、それでも守らないとって。  結果、まぁ喧嘩なんてしたことが無いような人間がどうなるかなんて簡単に想像の出来ることで……   「ん   」  急に意識がはっきりして、はっと目を開くとまだ慣れない自室の天井が見えた。  今まで見ていた天井は木目だったけれど、新しい部屋は白い。 「…………」  状況が呑み込めなくてどうしたんだっけ?って起き上がろうとしたら、頭の天辺がずきりと痛んで思わず呻いた。  そうすると、そう言えば昨日風呂に入った時に頭に激痛が走って……と少しずつ思い出してくる。 「っ!  虎徹っ!?」  さっと辺りを見回して見るも誰もおらず、代わりにきちんとハンガーに掛けられた制服と、アイロンのかかったシャツが吊るされているのが見えた。  一人暮らしのこの部屋で、俺がしていないのであればするのは虎徹しかない。 「…………」  音がしないのでいない可能性の方が大きかったけれど、念のために音を立てないようにそっとリビングへの扉を開いて向こうを覗いた。  いつもの調子で、裸エプロンで料理でも作ってやしないかと一瞬くらいは期待したけれど……  残念ながら覗いた先は静まり返っていて、一人暮らしなのだと知らしめる静けさがそこにあった。  もう慣れたと思っていたけれど、そう言うわけではないらしい……いや、慣れてたのに虎徹が散々騒ぐから…… 「……」  リビングの一人がけのテーブルの上にはご飯は冷蔵庫に入れてあるからと、丸文字で書かれたメモが置かれていた。  メモの文字はそれだけで……それ以外の言葉はない。  

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