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晴と雨の××× 12
もそもそと冷蔵庫の中を漁ると、以前は散々失敗していた卵焼きが綺麗な形で収められている。
「…………」
出汁がいいって言ってるのに、きっと今回も甘い甘い砂糖味だろうとそれを取り出した。
クラスメイト達の視線は相変わらずだったけれど、会った途端飛びついてくるかと思われた虎徹はこちらを見ようとすらしなかった。
食らった肩透かしにほっとすればいいのか、代わってしまった態度にきょどればいいのかわからずに出席の返事の声がひっくり返りそうになって咳き込む。
「風邪かなー?気をつけてねぇ」
それだけを返して……
たったそれだけで……
俺が望んでいたことのはずなのに、酷く落ち着かない気分でぎゅっと拳を握った。
採血を終えて結果を見ていた瀬能が、「なにかショックなことでもあった?」と尋ねてくる。
自分としては、虎徹が構ってこなくなったことが望んでいたことだったし、今までの生活に戻っただけだってだけの話で……問題はないし普通に過ごしている気だったから、意外だった。
「え……数値に出たりとかするんですか?」
「どう思う?」
色んな数字のかかれた紙を眺めて、瀬能はにやにやと腹の立つ笑顔だ。
「無いと思います」
「あ、そう?」
「…………」
何が言いたいんだろうかと、思わずむっと口をひん曲げる。
「先生のことで気にすると負けだ」
ぽんぽんと背中を叩き、阿川がそう言ってからカフェオレの入ったコップを手渡してきた。
少しコーヒーが強めのそれは、俺が大好きな味だ。
採血や検査は苦にならなかったが、検査のために研究所にくる面倒さにうんざりしていたけれど、この身ぴったりのこれが飲めるなら喫茶店にでも行ったと思えばいいだろう。
「それで、俺のバース性で何かわかりました?」
「いや全然」
しれっと返されて……俺の怒りがわかったのか阿川が宥めるように肩を叩いてくれる。
「とりあえず君のバース性に関して、今わかっている部分で一番近い表現をするならー……未分化、に近いのかなぁ」
医者が言うにしてはずいぶんと曖昧な表現だと、思わず睨みつけるような視線になってしまった。
俺の視線を受けて、瀬能は気まずそうにはははと軽く笑ってみせる。
「それ は、生活に何か不便が出るものなんですか?」
「バース性の未分化?」
「はい、例えば……将来だし、ぴんと来ないけど……子供が作れなかったり……」
そう言うと、瀬能はちょっと意外そうな顔をした。
自分くらいの年頃の人間がそんなことを考えるのが意外だとでも言いたそうだ。
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