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晴と雨の××× 15
「だめ」
予鈴の音に被せるように短く返すと流石に夏太はショックを受けたような顔をした。
「ええー?あれか?恋人には誰も近づいて欲しくないって言う 」
「こ、恋人じゃねぇよ」
「ええ!?」
夏太の声にぐっと言葉が詰まる。
キスもして、いろいろあったけれど正直なところ、虎徹と恋人同士だったのかと言われたら、実は返事のしようがなかったりして……
はっきりと恋人同士なのだと確認を取ったことがなかった。
キスまでしたんだから付き合っていると言ってもいいだろう と思わなくもないんだが、世の中には肉体関係があっても付き合ってないとか言い出す奴らもいることだし……
だからと言って虎徹にそのことを確認したら次の瞬間には婚姻届にサインさせられそうだし。
「え?でもやるとこまでやってんだろ?白状しちまえよ!内緒にしといてやるからさぁ」
そうにへへと笑うけれど……
思わず血の気が引く気がして慌てて首を振った。
「俺とあいつがどうこうなんて出来るわけないだろ!」
思わず蹴り飛ばしてしまった椅子が転がって……
昼休みの教室が静まり返ってしまう。
「あ や、その、 むりだろ、むりむり」
「なんで⁉」
「なんでって……」
理由が言えずに思わず口ごもる。
「あんなに可愛いのに!?贅沢言ってんなよ!」
「かわ かわ 」
可愛いのは知ってるよ!
「可愛くても、男だし」
「?」
きょとんと首を傾げられて、この学校にはバース性の奴らばかりが集まっているんだってことに気が付いた。
男女性ではなくてバース性で相手を見るこいつらにしたら外見詐欺の虎徹は至上に可愛い存在で、普通に恋愛対象に入ると言うことだろう。
男同士とか、そう言う部分のハードルが低いのは良くわかったけれど、あともう一つの、どうしても越えられないハードルについては……
「まぁ女の子がいいって奴もいるだろうしなぁ」
「ん……」
「もったいねー」
「も もったいないとかもったいなくないとか、そう言うんじゃないだろ」
「え?じゃあ結局、虎徹先生との関係って?」
「それは 」
それは……
ちゃんとした告白もないまま、一方的に拒絶したんだから関係なんて呼べるものはないはずで。
「虎徹とは、ただの ────他人?」
思うがままに言葉が出た瞬間、しん と教室が静まり返った。
夏太とのやり取りを、周りが耳をそばだてて聞いてたんだってことをすっかり忘れてしまっていた俺は、思わずはっと口を押えて……
そして、入り口で驚いた顔をして固まっている虎徹を見つけた。
どんぐり眼が目いっぱい開いていて、静まり返っているせいか本鈴がやけに大きく聞こえた。
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