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晴と雨の××× 16

 授業をするために教壇に立つ虎徹を真っ直ぐ見ることができず、教科書を読みこむふりをして視線を落とす。  俺の言葉に虎徹が固まっていたのはほんの一瞬で……すぐににこにこと笑いながら「授業だよー」と大きな声を上げた。  その声の明るさに、教室中が気まずげに動き出したのは言うまでもなくて……  根掘り葉掘りいろいろなことを聞いて来る夏太ですら困った顔をしているのだから、俺の言葉がどれだけ突き放した物言いだったのかはよくわかる。 「…………」  ノートの上にミミズのような落書きが増えていく。  耳に入るのは相変わらずの元気いっぱいの虎徹の声で……でも結局どうしていいのかわからないままだった。 「おや?悩みごとかな?」  フェロモン?かなんか言ってたものの検査結果を眺めている瀬能がそう言い、思わずぎょっと肩が跳ねる。 「……そう言うのって、数値に出るものなんですか?」 「出ないよ?」  あはは!と軽快に笑われてしまい……今すぐ家に帰ってやりたい気分だった。 「まぁ全く関係がないって言うわけじゃないけれど、悩んでいるのかなぁって言うのは顔を見れば一目瞭然」 「う……」 「まぁ話せる内容なら聞くけど?」  瀬能はそう軽く言い、けれど視線は検査結果の用紙の上から動かない。  聞いてはみたけれど聞く気はなさげな雰囲気に、曖昧な返事だけを返す。 「僕があれなら、阿川が君と年が変わらないから話が合うかもね」 「気が向いたら  」  そう返すのは、相談する気がないからだ。  聞く気がない医者と話す気がない相談者で向かい合っているなんて、なんて不毛なんだろうと斜に構えた感想をもっても仕方のないことだろう。 「あ。そうだ、引っ越し って、できますか?」 「うん?部屋?気に入らない?何か問題でもあった?」  やっと視線が動いてこちらを向く。  目尻に皺を刻んだ目元は柔和だと思えるのに、こちらを見る目は硬い。 「引っ越したいなって、思っただけなんですけど  」  歯切れ悪くそう言うと、瀬能の眉がピクリと動く。 「でもあそこと同等のセキュリティってなるとねぇ」 「男だし、別にこだわらないんですけど」 「  いやいや、そんな訳にはいかないでしょ?」  一瞬走った緊張感のようなものに、気づかないふりをしていた方が良かったんだろうか? 「オトコノコでも自衛は大事だよ?帰って人がいたとかなったら怖いでしょ?」 「まぁ……怖かったですけども」  え?と瀬能がこちらへと身を乗り出す。 「どういうことだい?侵入者が?」 「あ、や、勝手に入られていたって言っても、知り合いなんですけど」  

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