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晴と雨の××× 21
どこか待ち望んでいるのかもしれない。
ぽつんと一人きりになった瞬間のこの寂しさを、虎徹が現れるまでは何も感じなかったのに……
廊下の向こうにひらりと白いものが舞うと、思わずさっと視線を走らせてしまう。
それが虎徹の羽織っている白衣でないと分かると、どうしてもがっかりしたような気分になってしまって、離れるように仕向けたはずなのに身勝手にも追い縋る自分に対して酷く腹が立つ。
「今日もいい天気だよなぁ~」
「え……ああ」
少し肌寒い季節のはずなのに、連日続く晴天のせいかぽかぽかと気持ちいいくらいの気温だ。
俺がいるのだから、もっと曇りや雨が多くてもいいはずなのに。
自分が雨男だと言う自覚がある分、ここまで天気がいいと不安になってきてしまうのだ。
不思議なものを見る気分で空を見ていると言うのに、夏太は呑気に「昼寝したーい」とぼやいている。
「そう言えばさぁ、季節外れの転校だけどどして?」
夏太の何気ない問いに、思わずうっと言葉が詰まった。
瀬能から提案されたからだけれどそれは言ってはいけない事になっているから、あらかじめ用意していた理由を話す。
「大怪我した時に、今までのバース性が違ってるのがわかったから、ほら、つかたる市だといろいろと特典もあるし。その方がいいんじゃないかなって」
「ああーなるほどなー。ここだと番も見つけやすいしな」
番……
「つがい……って、あれだろ……今から結婚とか考えてんの?」
今までの人生で考えてくることのなかった言葉に、思わず警戒するような声が出た。
「番イコール結婚相手って言うわけじゃないけど。どうだろうなぁ?皆意識してると思うよ?運命とかは別として、やっぱり無性やベータと違ってたくさんいるわけじゃないから……」
「…………」
と、言うことは、夏太はαかΩかのどちらかなのだろう。
こちらに越してきた時に、瀬能から他の人のバース性を詮索するのは失礼なことだと教わっていたから尋ねはしなかったけれど、それでもぼんやりと考えてしまう。
「なんて言うか……欠けた感?って言うのがあるだろ?やっぱりそう言う部分を埋めたいなって思うから」
いつも能天気そうでちゃらちゃらとした夏太が珍しく神妙な顔をして肩をすくめる。
αやΩが感じる欠けた感と言うのがどう言ったものかは分からなかったけれど、俺ではその感覚はわからないと言うことだけははっきりとした。
「そう言う もんか」
思わず呻いた俺に、夏太はキョトンと首を傾げる。
「あれ?そう言うもんじゃないの?」
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