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晴と雨の××× 22
夏太の言うそれが虎徹に対して感じたものかどうかはわからないけれど……
白くひらひらとしたものが目の端に舞う度に振り返ってしまうのは、きっとただの、……目障りってだけだ。
ふわふわとした髪とどんぐり眼、満面の笑みを見せられると思わずどきりとして……
「 ────で、この暗褐色は海の 」
背伸びをしながら懸命に板書する姿は、一部の女子や男子からは可愛いと言われているけれど、意地を張らずに台を使えばいいと思う。
大きめの白衣を羽織った姿で授業をする姿はちまちまとしていて、見ていたくなくて視線をノートに移した。
虎徹は、出会った時からちっさくて可愛かった。
小動物のような動きも可愛かった。
ちんまりとした姿は掌の上に乗せて運べるんじゃないかって思えるほどで……
もう撲滅されたと思っていた不良たちに絡まれていたのを見た時、とっさに庇ってやらなきゃ、守ってやらなきゃって言う感情が溢れて、ケンカなんてしたことはないし腕っぷしがいいわけでもないのに虎徹の前に飛び出していた。
あっさり殴られてダウンしたのは忘れたい事実だけれど。
その後のごたごたで大怪我をした俺は、改めてバース検査をして今に至ると言うわけだ。
これで……離れられると、思ったのに……
虎徹のしつこさを甘く見ていたことは反省するべきなのだけれど、まさか追いかけてくるとは思わなかったし、瀬能もプライバシーには十分に注意すると言ってくれていたはずだった。
俺がこのつかたる市に引っ越すことと、この学校に通う手はずになっていることと、マンションの場所を教えた……もしくは漏らした人間がいるって言うことだ。
自分が珍しいバース性だってこともわかったし、それがボディガードをつけなきゃいけないくらいのモノだってこともわかった今、情報の扱い方に文句を言ってもいいだろう。
「俺は、離れたかったんだよ」
ぽつん と漏れた言葉は口の中で消えるほどだったはずなのに、どうしてだか振り返った虎徹がはっと大きな両目をさらに大きく見開いたかのように見えた。
窓が開いているせいか風の音もして、外の声も響いて、教室内でも小さな話し声がしている、そんな状況で聞こえるはずがないのに…………なんて、俺は虎徹の能力を過小評価し過ぎていたわけだ。
ゴミ捨てに行く最中、上から降ってきた白い塊に驚くことはなかった。
これが、虎徹のいつもの登場の仕方だから。
「 っ」
「こ こたく ぅ 」
思わず上を見上げてどの窓から下りてきたのか確認しようとしたけれど、見える範囲の校舎の窓はすべて閉まっているようだった。
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