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晴と雨の××× 23

 こいつはどこから飛び出してきたんだ?と考えていると、腹にどんっと衝撃がきて思わずゴミ箱ごと地面へと押し倒される。 「ぼ、僕がっ  悪いトコは……治すよ?」  ずれた眼鏡を慌てて戻し、胸の上でウルウルと涙を溜めた両目でこちらを見ている虎徹を見つめ返す。  柔らかそうな頬と、リップでも塗ってるのかなってくらいつやつやぷるぷるの唇と、それから俺だけを映して不安そうにしている瞳と……  ぴったり隙間なく密着した体からは、お互いの跳ねるような心臓の音だけが聞こえてくる。 「な なにか、嫌なコトしちゃったんだよね?だ、だから、離れたい、なんて、言う  」  目の縁に溜まった涙は決壊しそうで、それが頬を濡らす前に慌てて制服の裾でそれを拭った。 「こん、な、コトするのも、ダメかもなんだけど、我慢できなくてっ!僕どうしてもこたくんのことがっ  」  ぐっと涙を拭っていた手に力を込めて唇を押さえる。  中途半端になった言葉は漏れることはなくて、俺が聞く前に消えてしまう。 「……こたく  」 「世の中にはさ、好きとかだけじゃどうしようもないことってあるんだよ」  俺に抱き着いていた虎徹の腕にぎゅっと力が籠って……  そうすればするほど、混ざり合った心臓の音と、それから…… 「 っ」  ソレを感じる度に虎徹に対して重苦しい感情を抱いてしまうことを否定できなくて、男としてそれを口に出すのも憚られるためか、俺はただ虎徹を押し退けるしかできなかった。 「頑張るよ?僕、こたくんが言ってくれたらちゃんとできるようにするから!」  そうは言っても、散々「家では服を着ろ」と言い続けても着なかった虎徹が今更言うことを聞くとも思えない。  それに、コレは努力云々でどうにかなるような話ではないんだ。  じっと見つめられる気まずさに耐え切れず、そちらを見ないままに散らかったゴミを集めて駆け出す。  俺が全力で走ったところで、虎徹はあっと言う間に追いついてくるんだろうと思っていたけれど、後ろを振り返っても虎徹の姿はそこにはなかった。  ぽつぽつ と歩く道は静かで、思わず辺りを見回した。  新しい住まいから高校まで大通りを歩いていく道もあったけれど、海風を防ぐために長く木々が植えられた公園内を行く方が車が傍を通らないし安全だと思ったから、こちらを選んだのだけれど……  時間はまだ早くて明るかったから大丈夫だろうと思っていたが、どう言うわけだか犬を散歩させている人すら見当たらない。 「……」  なんだか、嫌な予感がした。  

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