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晴と雨の××× 24
それは頭で考えるようなものではなくて、肌で感じたと言った方が近かった。
ここを通ったのは数回を数える程度だったのに、はっきりとおかしいと感じ取れるほどの雰囲気の変わりように、とっさに道を逸れて表の通りの方へと走り出す。
ほんの数メートル先に公園の出口があるのにそのわずかな距離が遠く思えて、弾む息を飲みこみながらもがくように腕を伸ばした。
どんっ
背後で響いた落下音に飛び上がって振り返ったが、開けた場所のはずなのにその音の原因になったらしいものを見つけることはできなかった。
不気味に静まり返ったままの公園の姿に気味の悪さを感じだけれど、一番はここから出ることだとまた走り出す。
ほんのわずかな距離なのに、木々が音を遮っていたのか急に車の音が聞こえてくる。
急に夢から現実に放り出されたような気がして、ぽかんと街を見てから後ろを振り返った。
そこにあるのは、ただただ普通の木に囲まれた公園だ。
「……気の、せいかな」
ボディガードだとか侵入者だとか、そんな話をされていたから気が昂っていたせいなのかもしれない。
たまたま、人気が途切れるタイミングだってあるだろう。
虎徹にあんなことをされて……同様したのかもしれない。
「きっと そう、だよな」
そうに違いないと無理矢理納得させて家へと歩き出そうとすると、向こうから見知った顔が必死の形相でこちらに向かって走り寄ってくる。
「!? あ、えと……阿川さん?」
「あっよかった!間に合ったっ!」
息を吸い込むとひゅ と喉が鳴り、その度に阿川は苦しそうに顔を歪ませて肩を大きく震わせる。
白衣を着たままだったので、もしかしたら研究所からここまで走ってきたのかもしれないと思うと、息が整うのを待つのは苦じゃなかった。
「す、すみま せ……連絡貰って、急いできたんですけど」
「えと?」
「あ、林原さんの、護衛 のっ人から、バトンタッチって……言われてっ」
未だに息の整わない阿川を見ると、役に立つのか不安になったのは内緒の話だけれど……
「っ すみませんでした。お家まで送ります」
「途中で晩飯買いたんだけど」
そう言う俺に、阿川は快く頷いてくれた。
汗がひかないのか阿川が「暑い」と呻きながら襟元と引っ張った時、首元に小さな楕円が綺麗に並んでいるのが目に入った。
それが何かも、教わった。
「阿川さんには、番がいるんですか?」
「あっあの……はい」
ぱっと首元を押さえた阿川は、ちょっと恥じらうような顔をしてから嬉しそうに頷く。
その表情は……幸せそうだ。
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