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晴と雨の××× 28

「どうしてずっと敬語なんですか?」  瀬能は阿川が俺と歳があまり変わらないと言っていた。  ついついつられてこちらも堅苦しく返しているけれど、もう少し砕けた喋り方でも良さそうなものだった。  研究対象だからだとか何か理由があるのだろうかと首を傾げる。   「えっっっ」  けれど阿川の反応は、何か深い事情がありそうな反応で…… 「あのっっっあっそのっそのっ……その、ですね」  先ほどまで饒舌に話していたなんて思えないほどしどろもどろになると、阿川は言葉を探しているのかそわそわと視線を彷徨わせる。 「あの、ですね、ですから……立場上、ちょっと……タメ口なんて……無理、無理無理無理無理っむりっ!ですっ」 「は?いや、なに  」 「お願いしますお願いしますっこれで!これでお願いします!林原さんとタメ口なんて無理ですっ」  阿川が取り乱して叫ぶせいか、行き交う人の視線が痛くて…… 「ちょ、わ、わかりましたっわかりましたからっもう言いませんからっ!」 「あり、ありがとうございますっ」  今にも感謝のあまり泣き出してしまいそうな阿川の姿に、いったい何が起こったのかチンプンカンプンだ。  俺の家は両親共働きの別段取り立ってて何か言えることがなく、ちょっと放任がすぎる程度の一般的な普通の家庭だからこういった態度をとられる理由がわからなかった。  それとも『χ』と言うバース性がそんな態度を阿川にとらせるんだろうか? 「…………」  ちょっと踏み込んだ話をして、ただの知り合いよりは仲良くなったんじゃって思っていただけになんだか居心地が悪くなって……  マンションに帰るまでの間、ずっとギクシャクしていた。 「あ、そうだ!」  そう声を上げた俺に、阿川はぴっと背筋を正して身構える。 「何か?」 「あの……挨拶を……」 「?」 「俺をガード?してくれているらしい人に挨拶ぐらいしたいなって思って」  本当は挨拶ではなく、どんな人なのかを知りたかっただけだ。  瀬能の話を信じるならば、そのボディガードをしてくれている人は常に俺の身辺警護をしているそうで、……なんと言えばいいのか、見も知らない人物が常に傍に居ると言う気持ち悪さをなんとかしたかった。  金持ちじゃあるまいし、人が常に周りにいる生活なんてしたことがないんだからしょうがない。  周りにいるにならば、せめてまったく知らない人から知ってる人に変わって欲しいと思ってしまう。 「お礼も言いたし、顔ぐらい見ておきたいなって」  できるだけ失礼にならないように言葉を選んでそろりと言う。

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