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晴と雨の××× 38

 モデルだ と思った原因の一つであるすらりとした体は俺よりも頭一つは高い。  丁寧に手入れされているのがわかる茶色い髪も、その奥から見えるアーモンド形の両目の形も理想なんじゃないかなって思えるくらいキレイな形だ。  痩せすぎていると言う印象はないのに細身で、細身なのに綺麗に筋肉がついているのがわかる、そんな体型だ。  すっきりと通った鼻筋と、微妙に悪意を含ませているかのように思えてしまう形の良い唇と……それらを見ると落ち着かなくなってくる。  こんな芸能人いたか?  いや、もしかしたらネットか雑誌かもしれない。   「直接来られなくとも」 「うん、そうなんだけど……見てみたくて。噂の子」  噂の子……  自分の預かり知らぬところで、自分の話が回っているのかと思うと嫌な気分になる。  何を言われているのか……こいつらの俺への態度を考えると、決していいものではないのだろう。 「思ったより、ちんちくりんだったね」  さらっと言われた言葉に、「は?」と言葉が漏れる。 「オメガにも、ましてやアルファにも成れるって言うからどんなすごい子が来るのかと思ってたのに、なにその眼鏡」  初対面で投げ返られた言葉にしてはあんまりで、カチンときて思わず睨む目に力を込めた。 「野暮ったいし、それになんか埃だらけで汚い」 「!?」  建築現場の床に転がされていたのだから体中汚れているのはしかたがないことだし、それを気にして払う余裕も自由もなかった。  それをあげつらって言われてしまうと、イラっとしたものが込み上げるのはしかたがない。 「  ────っ」  随分生意気な顔をしてしまったからか、男の手が伸びてかなり強い力で顎を掴んでくる。  俺を見下ろす目はずいぶんと刺々しい。 「むっかつく。なんでお前に睨まれなきゃなわけ?」  綺麗な顔立ちは苛立ちに歪んだとしても端整なままだった。  スズメの人を殺してきたかのような目に睨まれたことを考えると、綺麗な顔に睨まれる程度は何ともない。   「別に。睨んでない方が可愛いのにって思っただけだよ」 「……は?頭湧いてるの?」  俺自身、どうしてこんなセリフがぺろっと出たのか分からなかったけれど、男はまるで気持ち悪い虫から手を離すよう慌てて俺から飛び退いて睨みつけてきた。 「なに、こいつ」 「獅子王さん、申し訳ないですが移動しましょう。長い時間同じ場所に居るのはよくないです」 「あ、わかった。車は裏に着けてるよ」  スズメはこくりと頷き、獅子王と呼ばれた男を先導にして再び歩き出した。      

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