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晴と雨の××× 41

 振り払って声を上げようと思えばできたけれど、獅子王の視線がちらりとスズメの方に移動したのを見て悟った。  ここで、足を引っ張るような行為をした俺を、あの男がどうするか……  「助けて」の言葉を飲み込んだ俺を獅子王が引っ張る。 「 ────林原さんっ!」  俺の名前を呼ぶ声は阿川のものだ。 「見つけましたっ!」  腹に力を入れて叫んだ声は、建築途中の建物の中で木霊して聞こえる。  それは他にも人がいると言うことで…… 「  っ、スズメさん!先生を!」  そう獅子王が叫ぶ前に、スズメは先生に向けて何かを振り下ろしていた。  距離のために咄嗟にはわからなかったけれど、それが注射器だと分かったのは投げ捨てられたそれが足元に転がってきたからだ。  ヤクザのような男と注射器 なんて組み合わせは、ろくでもない薬のイメージしかないだけに小さく「ひっ」と声が出た。 「  はや────っ」  出入口から駆け込んできた阿川がこちらに走ってこようとして、つんのめるようにして倒れてしまった。  受け身も何も取らずに顔から倒れ込んだ音は大きかったけれど、もう一本注射器を投げ捨てたスズメに乱暴に引っ張られてほとんど聞こえない。  ガクンと視界が揺れて反転するかのような、目が回る感覚がした後、俺は俵のようにスズメの肩に担がれているのを理解した。 「は ゃ   」  俺の名を呼ぶ阿川の声が、荒い息に途切れる。  どうしたのかと思っているところに、先生の「臭い」と呻く声が聞こえてきた。 「 な、んでっ  オレにっオメガのフェロモ……っ効かな  っ」  地面に這いつくばるようにして苦し気に呻く阿川は、呼吸をする度に苦しそうにひゅうひゅうと音を立てている。 「はは!バカだろう?これがオメガのニオイだって?」  一つ一つ、獅子王がシャツのボタンをはずして行く毎に阿川の呻きが酷くなっていく。  俺以外の全員が、今この場で何が起こっているのか理解しているのはわかっていたが、けれど見た限り獅子王が阿川に何かしたような気配はなかった。 「 ひ  ────っ」  脂汗を浮かべて、阿川は血が滲むほど唇を噛み締めている。 「ほら、僕のフェロモンに落ちちゃいなよ?」 「く……ぁ  っ」  フェロモン……と言う単語に、つい空気中の気配を窺った。  けれど、特に何か匂いに気づいたわけじゃなかった……────なのに、 「  っ」  何かが鼻を掠めた気がした。  強いて言うなら、甘い?匂いだ。 「な……に?」  途端、ざわりと何かが駆け上がる。 「な ────っ」 「さすがにこの濃さだと分かる?」  

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