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晴と雨の××× 42

 覗き込むように俺を見てくる獅子王の顔は紅潮していて、目は泣き出しそうに潤んでいた。 「な、に?」  声はどうしてだか上がる息のために途切れがちだ。 「何を、し、たの?」    問いかけに答えてくれるなんて思ってもいなかったけれど、それでも疑問を解決するには問いかけなくてはならない。 「ああああああああっちっくしょうっ!」  怒鳴り声を上げながら阿川が自分の足に注射器を突き立てる。 「あはは‼バーカ!普通の抑制剤が効くわけないよ」  阿川に向けて笑い声を上げた獅子王に、スズメは行くぞとジェスチャーで指示を飛ばす。  足早に歩き出そうとした俺に、とと と人の走る音が聞こえた。  コンクリートの上を走るその音に、スズメの足が止まった。    周りは、まだ工事の途中のために整えられていなくて土がむき出しだ。   「   ────じゃあさぁ  」  頭上からかけられた言葉にスズメがはっとそちらを向く。  どぉん と腹に響くような音と共に土煙が舞う。  追いかけるように白衣がふわりと広がって、いつもはきょときょととつぶらに俺を見ている虎徹がぞっとするような冷たさを湛えてこちらを見ている。 「これなら、どうかな?」  視線の硬質さに比べて声はどこかすっとぼけたように軽かった。  けれど俺はその時、人生で初めて空気がひび割れるのだと感じた。 「ね?」  可愛らしい問いかけとは裏腹に、踏み出された一歩は地面に沈み込むんじゃと思えるほど冷たく重い気配だ。  飛び降りてきた際の空気の動きで風が生まれ、辺りを包んでいた甘ったるい気配が掻き混ぜられて……  その隙間を縫うように重苦しいモノは這い寄る。 「   ────  は……」  最初に声を上げたのは阿川だ。  うずくまってぶるぶると震えるように固まって呻き声を漏らしている。 「さぁ、選んでいいよ?血まみれか、血まみれか、血まみれか……どれがいい?」  選択肢のない問いかけは無邪気なはずなのに、俺を抱えているスズメの手がぶるぶると震え始める。  支えている手の力が今にも抜けそうに感じて、このまま落とされるんじゃって思えるほどだった。 「  ひ、ぃ  わ わた、し、はっ  ああああああっ」 「先生!?」  ガタガタと真っ青な顔をして倒れ込んだ先生にスズメがはっとそちらを向く。  その一瞬だった。  虎徹の体がふっと動いて……  次の瞬間には俺は空中に放り出されて、吹き飛ばされるスズメの驚いた顔を見た。 「ぁ  っ」  地面に投げ出されるんだと思っていたのに、激突する前に小さな両手に抱えられて「ぎゃっ」って変な声が漏れてしまった。    

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