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晴と雨の××× 44
「僕、言ったよね?悪さするならお尻叩くよって」
空気の重さに、風が這いずるようだった。
「 っ」
「悪い人とお付き合いをしちゃいけません」
「……」
「人様に迷惑をかけてはいけません」
「……」
「お天道様に顔向けできないような悪さをしちゃいけません」
「 だ 」
「男同士の約束だったよね?」
虎徹の喉の奥で、引き攣るような笑いが起こる。
「悪い子は、どう、なるんだったかな?」
軽い問い掛けの言葉なのに、どうしてだかぞっとして……
「きちんと説明してくれるよね?」
「だっ だって!兄さんが全然帰ってこないから!だ、か っ僕は 」
「獅子王さんっ」
後ろからスズメに腕を引っ張られて獅子王の言葉が途切れた。
はっとした顔をしてよろめくようにスズメの方へと後ずさる。
「あ……」
「他に増援はないようです、……離れますよ」
早口で告げるスズメに頷き、青い顔をしたままさっと走り出そうとしたした瞬間、
「 平伏せ」
静かな声がどんな音よりも真っ直ぐに脳を揺さぶった。
俺の目の前で獅子王達が膝から崩れ落ち、「何が起こった?」と虎徹の腕の中から体を起こそうとしてできなかった。
重力に逆らいきれず、だからと言って落ちて行く体を支えることもできない。
体が言うことを聞かないまま、地面へと激突しそうだと他人事のように思っていると「わぁ!」と虎徹が慌てた声を上げる。
「あああ!こたくんごめんっそんなつもりじゃなくてっ」
「……ぁ」
小さな手にしっかりと抱き留められ、俺の顔は地面にぶち当たる寸前だ。
「こたくんにまで効くなんて思ってもみなくてっホントだよ!?」
「な……なに……」
訳がわからない。
体が突然思い通りに動かなくなったのが恐ろしくて恐ろしくて……
ひぃひぃと吸い込んだ息がうまく吐けずに喉が鳴る。
「こたくんっ!?」
珍しく虎徹の目がさっと曇って、今にも雨が降り出しそうな色に見えた。
ぽたぽたと雫の落ちる音で目を覚ます。
ああ、きっとまた雨なんだろうな って思いながら瞼を開けると、そこに居たのは大きなどんぐり眼から幾つも幾つも涙を流している虎徹だった。
止まることを知らないように、ぽたぽたと幾つもの雫が溢れては落ち、雨の音のように聞こえ続ける。
「────虎徹」
「っ!?こたくんっ!?起きた!?」
がばっと抱き着かれて、何が何だか……
「ごめ ごめんっこたくんっ」
「っ……わ、わかったっわかったから抱き着くなってっ」
ぎゅうぎゅうと抱き締められて、起きたばかりで気絶するんじゃってくらい苦しい。
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