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晴と雨の××× 45
いや、ガチでくるし……
「 っ!」
虎徹の腕から逃れようとするもそんな簡単に逃がしてくれる腕じゃないのはわかってる。
「くる くる し 」
とにかくこう言う時は訴えるかもしくはさっさと気絶してしまうかで……
「はっ!こたくん大丈夫!?」
「あんまり……」
それでも放してくれなくて、体のどこかがミシ って音を立てた。
「もう体は大丈夫?」
「現在進行形で壊れそう……」
「看護師さん呼ぼうか?」
「とりあえず放して……」
朦朧とし始めた意識の端でとりあえずそれだけを言うと、やっと自分の行いを知ることができたのかぱっと手を離す。
「っ は、は、はぁ」
深く息を吸い込める有難さを感じながら、辺りを見回してここが病院なんだって知る。
なんだかわけのわからないままに誘拐されて、あの工事現場から移動させられそうになったとこで阿川と虎徹が来てくれて……?
それからどうなったんだっけ?
虎徹が来て……
それからやけに空気が重苦しくなったことは朧げに覚えていた。
「こたくん?平気?」
「え……あ、うん……うん?なんで俺……」
あの時、俺は虎徹に抱き上げられてはいたけれど先程のようにぎゅうぎゅうに締め付けられていたわけじゃない。
どうして気絶してしまったのかわからなくて、問いかけるような目を向ける。
「ん、こたくんは……僕のフェロモンがきつすぎて倒れちゃったんだよ」
珍しく殊勝な様子で言うと、「ごめんね」と頭を下げてきた。
虎徹がこんな風に謝るってことは珍しくて、思わず変な表情を作ってしまっていたんだと思う。
大きな目がうるうると潤んで、またぽたぽたと雫を零し始める。
「も、も、もう使わないからぁ」
「つか……?」
使わないとか言われても、何を使われたのかわからない俺はきょとんとするしかない。
「くすん」
長い睫毛にびっしりと雫をつけて、虎徹は本当に反省しているようだった。
「あー、まぁ、なんかわかんないけど、もういいよ」
「ホント?」
「別に体に何かあったって感じじゃないし、使う使わないとかもわからないから。必要な時に使えばいいんじゃないか?」
良くわからないけれど、それであの状況が何とかなって俺は病院に担ぎ込まれているらしいのだから。
「いいの?」
「ああ」
虎徹はもう一度問うように、言葉の代わりに潤む目でじっと俺を見上げている。
「本当に気にしてないって。それよりも何があったのかさっぱりわからないし、なんで誘拐されたのかとかその辺のことの方が知りたいかな」
原因がわかれば対応もしやすいし、あんな目に遭うのはもうごめんだ。
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