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晴と雨の××× 47
素直に頭を下げてくれるこの人は、少なくとも俺を連れ去ろうとした奴らよりもいい人なんだろう。
「できるだけ、今まで通りの生活を と思っていたんだけれどね」
心底困ったように苦笑する姿に、俺への気遣いを見た。
「それでー……今までの警護の仕方を変えようと思っているんだ。できれば住まいもこちらに移して貰えたらと思うのだけれど」
窺う形を取っていたがそれは俺の身を考えたら決定と思って違いないことだ。
どうにもしようのないことに頷き返すと、同情なのか……柔らかい視線が俺を見返す。
「君の安全を第一に考えていこうと思うからね。それで、学校の方だけれど……」
もう危険だから通うことはできないのかな と思った俺を他所に、瀬能は車での送迎を提案してくれる。
転校したばかりで友人と呼べる関係も多くはなかったけれど、それでも普通の高校生として過ごしていいんだと言われたようでほっと胸を撫で下ろす。
「その間の護衛だけれど、距離を取って と言うのが良くないことはわかったので可能な限り身近にいるようになるからね」
「え……」
それは、見も知らぬ人間にずっと付きまとわれると言うことで。
俺の頭の中では黒いサングラスとスーツのいかついおっさんがびったり貼り付いているイメージで埋め尽くされていた。
自分自身が危険なことは重々承知だけれど、絵面を考えただけでも冷や汗が出てくる。
「そ、それは 見も知らない人間に常に傍に居られるのは……」
「え?そうなの!?」
こちらがびっくりするような声を上げた瀬能に、俺の方が驚いた。
「同棲してたって聞いてたんだけど」
「はい!?」
「もう結婚の約束までしてるんだって」
「ええ!?」
「もう二人の間には隠すものなんでパンツ一枚もないと」
「パンツってなんですか!?」
素っ頓狂な声を上げた途端、ばんって勢いよく扉が開いて何かが飛びついてくる。
「ひどいやっこたくんっ!僕とは裸エプロンの仲なのにっ」
「パンツは履いてただろうがっ!」
勢いよく床に押し倒された俺に覆い被さって、虎徹がおいおいと大泣きをするものだからなんだか部屋の中が変な雰囲気だ。
「でもっ僕のお尻も見たでしょ?」
「 ……あー……それは……あれだ、 」
最初は本当に裸エプロンだったから、不可抗力で……
「ちゅーだってしたし!一緒のお布団で寝たクセにーっ」
「あれはっ 」
あれは、予備の布団にこいつが水を零すから……
「あっ だっ でっ ……全部お前のせいだろっ」
飛び出した言葉はなんだかろくでなしの言葉のようだった。
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