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晴と雨の××× 48
現に、俺を見る瀬能の視線が冷ややかだ。
「年長者から助言するとしたら、責任は取った方がいいよ?じゃないと猟銃持って追いかけ回されることになるからね」
はは と乾いた笑いを零す瀬能に必死に首を振って見せるが、うるうると目を潤ませた虎徹とどう説明すればいいのかとどもりまくっている俺とじゃ説得力が段違いだった。
「何をしたら猟銃で追いかけ回されるんですか」
うんざりさを隠そうともしない口調で言いながら阿川が入ってくる。
俺と虎徹の惨事を見てから何か言いたそうにしていたけれど、それも一瞬だった。
「うーん……恩師からお預かりしていた娘さんをねぇ」
しみじみと語り始めた瀬能を遮るように、阿川はこちらに「立てますか?」と声をかけてついでに手を差し出してくれる。
「そう言えば、瀬能先生。おっさ……じゃなかった。大神さんがお待ちですよ」
「え?もうそんな時間かな?じゃあ阿川くんがあと説明しといてよ」
「えっ⁉まだしてないんですか⁉」
非難するような声を上げているのに、瀬能はひらひらと手を振って聞く気のない態度で慌ただしく部屋を出て行ってしまった。
「 ……えっと」
阿川の視線が俺、そして虎徹に移る。
「お話はどこまで?」
「えっと……えーっと……」
虎徹に飛びつかれた衝撃で何の話をしていたかさっぱりだ。
「あ、俺の警護についている方について……」
と、そこまで口に出して、しがみついたままの存在に気が付いた。
あ。これか。
「あーっ!今これって思ったでしょ⁉ちゃんとはにーって呼んでくれないと!ぷんぷんするよ?」
それでなくとも柔らかい頬をぷくーと膨らませて怒るふりをする虎徹。
「…………ボディガードってお前のことかぁぁあ!」
「わっいきなり大きな声出したらびっくりするよ?こたくんのあわてんぼさん!」
ふふふ と笑ってみせるけれど……
じゃあなんだ?
俺は引っ越ししなくても良かったし、引っ越しがなかったら誘拐されることもなかったってことか⁉
「お前が諸原因じゃねぇか!」
「僕はこたくんの生活のすべてに関わってたいんだよぅ」
「ちょ……ちょっといったん離れろ」
「やだよーずっと傍に寄れなかったんだからー!」
思わず阿川に救いを求めるけれど、視線を逸らして助けてはくれないようだ。
「今度は堂々と傍にいれるんだよー?」
「今でも十分いただろうがっ」
「密着できないよ⁉」
「普通、四六時中密着しないもんなんだよってか、ボディガードは密着しねぇ!」
ぐいぐいと押し退けるけれど、そんなことで剥がれるような腕力じゃない。
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